【建設業「命」の現場で 8】第2章・住まいに明かりを/土との格闘 画像 【建設業「命」の現場で 8】第2章・住まいに明かりを/土との格闘

インバウンド・地域活性

 東日本大震災の被災地で進む復興まちづくり事業には、「土との闘い」という側面がある。防災集団移転促進事業(防集事業)などで山を切り崩して宅地を造る際は、発生土を搬出しなければ工事が進まない。かさ上げの場合は逆に、土が来なければ何も始まらない。土のやり取りが、工事進ちょくの命運を握る。その実態を、宮城県気仙沼市の防集事業の現場で追った。
 同市では、点在する38地区47団地で防集事業や災害公営住宅のための用地造成が進む。施工は大成建設が一手に手掛ける。切り土による発生土量が約320万立方メートルに上る一方、盛り土で必要な量は約70万立方メートルにとどまる。残りの250万立方メートルの行き先を考えなければ、先に進めない。
 搬出先の一つが、鹿折地区と南気仙沼地区の土地区画整理事業で、かさ上げのために約210万立方メートルの土が必要となる。防潮堤や農地復旧の工事でも土が必要だ。一方で、国土交通省が進める三陸沿岸道路の工事では、防集事業と同様に大量の土が発生する。供給元と受け入れ先が交錯する中で、関係機関が集まって調整会議を行い、土のマッチングを図った。
 だが、想定通りに進むほど現実は甘くない。防集事業では、被災者の意向の変化から造成計画が縮小する事態が発生。受け入れ先となる工事が、合意形成などの遅れで進まず、土が運べないケースも相次いだ。
 土の品質という壁にも直面した。宅地のかさ上げなどには良質な土を用いるため、ボーリング調査で土質を確認して行き先を決めていた。しかし、予想以上に地層の変化が激しく、掘ってみると品質上、宅地に用いることが難しく、農地復旧などに回すといった事態も続出した。
 牧沢地区の切り土では、搬出先が当初計画(12カ所)の2倍近い23カ所に膨れ上がった。土の搬出先が変更となれば、運搬距離が変わり、ダンプトラックが1日に運ぶ量も当然変わる。そうなると、ダンプの確保や采配など施工体制全体に影響が生じる。一つの変更は連鎖的に波及していくのだ。
 「肝は、情報と人的ネットワークだ」と、同市建設部技術主幹の清水正明は言う。防集事業に関しては、同市と、統括マネジメントを担うパシフィックコンサルタンツ、そして施工の大成建設のそれぞれに核となる人物を決め、土のやり取りに関する情報を集約。変更が生じても、土の搬出入が何とか流れるよう緊密に連絡を取り合っていた。いつ、どこで、どのような土が、どれくらい必要なのか-。他の事業も含めて全体像を把握しつつ、最適解を見つけて先へと進めた。どうしようもない場合は、ストックヤードに仮置きして、時間的なずれを埋めた。
 ピーク時には1日500~600台のダンプトラックが行き交った。ダンプを増やせば渋滞が発生し、1台当たりの稼働率が落ちる。さまざまなジレンマを乗り越えて工事は動いている。
 同市の防集事業では今、続々と宅地が完成し、再建住宅の建設も進む。「被災者たちはまだかまだかと待っている。そこにやりがいがある」。苦しみながらも工事を進める意味を、清水はそう話している。=敬称略
 (毎週火曜日に掲載します。ご意見・ご感想をメールでお寄せ下さい。東北支社・牧野洋久、mak@decn.co.jp)

建設業「命」の現場で・8/第2章・住まいに明かりを/土との格闘

《日刊建設工業新聞》

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