東芝が深刻、フリーキャッシュフロー悪化で資金調達に影響も
マネジメント
業績悪化に対し9月末の自己資本比率は3月末に比べ、0・6ポイント減の16・5%にとどめた。「株式売却で何とか1兆円台(の自己資本)をキープした」(平田政善最高財務責任者)ためだ。ただ、株式売却は一時的な利益創出策であり、危機回避の措置に過ぎない。
下期は構造改革を進める家電事業と半導体事業で、人員削減など改革費用が膨らむ可能性が高い。また米ウエスチングハウス(WH)など、買収した子会社の減損リスクもくすぶる。これらのリスクが顕在化すれば株式の売却効果が相殺され、自己資本比率が落ち込む恐れがある。
12月には社債700億円の償還を迎え、16年度には計600億円の償還も控える。財務が悪化すれば信用格付けが低下し資金調達が難しくなるが、これらの資金をどう手当てするのか。すでに格付け会社は東芝の格付けを引き下げつつある。
現在、株式の売却で手元資金を手厚くしているが、主要事業の低迷で資金が流出しており、万全ではない。市場調達か銀行借り入れに頼れば金利コストの負担が増すのは間違いなく、財務にボディーブローのように効いてくるはずだ。
フリー・キャッシュ・フロー(FCF)の悪化も心配だ。上期のFCFは株式売却を除くと、前年同期比528億円悪化のマイナス2090億円。半導体メモリーなど主要事業の稼ぐ力が弱まっており、下期での巻き返しは難しい。
FCFの衰えは返済原資を確保できないだけでなく、成長投資にも影響する。特に半導体メモリーは巨額の設備投資が必要だ。適切な時期に投資できなければ競合相手との差が開き、収益力が弱まる恐れがある。
これらはワーストシナリオではあるが、改革が遅延すれば悪夢は現実味を帯びてくる。東芝は電力など社会インフラを支え、日本の産業界に不可欠な存在だ。早期の再建に向けて低収益事業に見切りをつけ、稼げる体質に転じる必要がある。
(文=敷田寛明)
東芝、フリーキャッシュフロー悪化。資金調達に影響も
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