アイシンの提示した自動運転の「現実解 」 画像 アイシンの提示した自動運転の「現実解 」

インバウンド・地域活性

10月28日に開幕した東京モーターショー15においても、いくつかの自動運転技術の紹介があった。そういうものを見るたびに思うのが、「何のための自動運転か」ということである。


◆現実社会における、自動運転の意義とは

自動運転は、もともと米国の国防省で開発が始まった。砂漠を自動運転で走破し、ドローンの如く、敵に一撃を加えて帰って来てくれれば、強力な戦力になる。「何のための自動運転か」は明らかである。ここには、大きなマーケットも存在するであろう。

では、我々の実社会においては「何のための自動運転か」。飲酒運転が可能性となったり、車内で睡眠も読書もできるというためであろうか。私は、いくらインターネット・オブ・シングス(IOT)が発達しても、事故は起きると思う。それは、道路や自然はインターネットと異なり、最後までアナログで、完全無欠なシステムを作ることは不可能だと思うからである。

また、自動車は、コンピューターとは異なり、人間の命にかかわる乗り物であり、事故が起きた場合の責任は誰が担うかというと、それはやはりドライバーであろう。そうすると、やはり、自動運転といってもドライバーは、いつでもマニュアル運転に戻れる状態にいなければならない。であれば、寝ることも、読書をすることも許されないはずである。


◆事故を回避する、アイシン精機の自動運転技術

今回のモーターショーで、「何のための自動運転か」の答えを出しているのは、アイシン精機だと感じた。アイシン精機の伊原社長は、10月29日のモーターショーの記者会見で、「ドライバーが不測の事態で意識を失ってしまった場合など、緊急時にクルマを安全に退避させる技術」として新技術を紹介した。アイシンは、2008年に「ドライバーモニターシステム」を開発しており、ドライバーの瞼や視線の動きから、居眠り運転などを感知し、警報を発する技術を市販化している。

このシステムと自動運転のシステムを組み合わせ、ドライバーが居眠りなど意識を失った瞬間に自動運転に切り替わり、路肩に安全に駐車するという新しいシステムをほぼ完成させたという。さらに、四輪操舵システム(4WS)としてドライバーがハンドルの上にうつ伏せ状態となっても、後輪でクルマを自動運転するシステムまで開発した。

「何のための自動運転か」が明確になれば、こうした応用技術の開発が進む。できることなら、路肩に安全に停車した後、後続車に危険を知らせる三角パネルを自動設置し、警察や消防に連絡が入ってドライバーを救急車で運ぶか、飲酒運転・居眠りであれば逮捕して欲しい。

実際、居眠り運転による悲劇的な事故は後を絶たない。飲酒事故も多くは、居眠りが直接原因である。「小学生の列にクルマが突っ込む」、「国道で対向車線に進入して正面衝突」、「高速道路でバスがサービスエリアに猛スピード進入、駐車中のクルマを次々に跳ね飛ばす」。こうした新聞の見出しは、いっこうに減らない。居眠り運転は、ブレーキが踏まれずに事故になるので死亡事故が多くなる。

伊原社長は、会見の中で「交通事故ゼロのクルマ社会を目指す」と技術開発のポリシーを述べている。昨今、自動運転の実現時期をめぐる報道合戦が派手に行われているが、ムードが先行している感もある。社会が必要とする「現実解」を提示したアイシン精機の今回の発表は、その流れを変えてくれるものと期待したい。


<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事。

【土井正己のMove the World】「何のため」の自動運転か?…アイシンの提示した自動運転の「現実解 」

《土井 正己》

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