建設産業の担い手確保と働き方改革……全国各地で動き出す 画像 建設産業の担い手確保と働き方改革……全国各地で動き出す

人材

 9月に着工した富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)の建て替えと歩調を合わせるように、建設産業の担い手を確保・育成する取り組みが全国各地で動き始めた。建設産業界、教育機関、訓練施設、行政などが連携して若者を地域で一人前になるまで育て上げることができる環境を作り上げ、せっかく建設会社に就職しても3年も経たないうちに辞めてしまうような現状の改善を狙う。

 ◇担い手育成活動、全国で動き出す◇

 富士教育訓練センターの建て替えに向けて建設業界や関連機関から集めた資金で作った「担い手育成基盤整備基金」のソフト事業分を活動原資として、14年10月発足した「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」(事務局・建設業振興基金)は、「地域連携ネットワーク構築支援事業」で各地域の活動を後押ししている。

 支援事業の第1弾(14年度分)は7件(実施事業2件、予備調査5件)、第2弾(15年度分)には14件(すべて予備調査)を選定。それぞれの実施団体に事業を委託する形で必要な資金を手当てしている。14年度分に予備調査を実施した団体はそれぞれ、具体化を目指した実施事業に移行した。

 第1弾の実施事業として真っ先に手を挙げた一つが長崎県建設産業団体連合会(長崎県建産連、谷村隆三会長)だ。元請企業を中心とする長崎県建設業協会と下請、設計・コンサルタント、資材など県内28団体が参加して13年7月に発足した長崎県建産連を母体とすることで、建設産業をめぐる諸課題を共有する元請と下請が足並みをそろえた活動を展開できるようにする。

 長崎県建産連は、若者に対する技能者教育をニーズの高い「鉄筋工事」で来春スタートさせる予定だ。これに先立ち今秋には、厚生労働省の「建設労働者緊急育成支援事業」として、未就業の若者に技能を身に付けてもらう研修も始める。

 いずれの研修も大村市内にある県の外郭団体・長崎県建設技術研究センターの一部を借り、資機材を持ち込んで行う。

 講師には工業高校で出前講座を行った経験もある県内のベテラン職人を複数人選抜。このうちの1人を7月に富士教育訓練センターに送り込み、より実践的な訓練を行うためのノウハウを習得してもらった。

 過疎地の廃校を核に職人を育てるまちづくりに取り組むという地方創生の観点からも注目されそうな動きもある。

 群馬県沼田市では来春、廃校のままとなっている旧利根村立南郷小学校(沼田市利根町)の校舎を利用した職人育成の拠点が立ち上がる予定だ。

 同市内で自前の企業訓練校による人材育成に取り組む建築板金のテクノアウター(桑原勝則社長)を中心とする運営母体の「利根沼田テクノアカデミー(仮称)」が10月末にも発足する。板金や瓦といった専門職種から始め、分野を広げながら多能工の育成も目指していく。この取り組みについては、群馬県板金工業組合がコンソーシアムから予備調査を受託し実現に向けた活動を進めている。

 民間主導のこうした取り組みに沼田市の横山公一市長も大きな期待を寄せ、若者離れが深刻な建設業の担い手確保・育成の全国的なモデルづくりに意欲を示している。児童減少に伴う廃校や空き家をどう再生・再利用していくかは、全国の地方が抱える課題。「沼田モデル」を参考に今後、職人育成の拠点として利用することができれば、地方創生と建設産業の担い手確保・育成をセットにした取り組みの可能性が広がりそうだ。

 国土交通省も沼田市での取り組みに全面協力する構えで、ハード、ソフトの両面を視野に入れて地方創生向けに用意された交付金の申請を手伝うなど、その実現を後押ししている。

 コンソーシアムが支援するその他の地域も、それぞれの実情に応じた活動を展開。1社単独では難しい教育訓練体系の構築を地域の関係機関が協力することで実現させ、地域に根付かせようとしている。14年度にスタートしたコンソーシアムの活動期間は5年。16年度も再度、支援先を公募・選定することにしており、将来的には全国どの地域でも、建設産業に入ってきた若者が教育訓練を受けられる仕組みを構築することを目指す。

 各地域の取り組みについて、建設産業の教育訓練の中核拠点と位置付けられる富士教育訓練センターを運営する全国建設産業教育訓練協会の才賀清二郎会長は、「互いに連携していくことが重要だ。各地域で問題があれば相談に応じたい。協力は惜しまない」と話し、全国各地の地域連携ネットワークとのつながりを重視していく考えを示している。
日刊建設工業新聞

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