【建築へ】銅板葺きの街のシンボル、愛媛・あかがねミュージアムがオープン 画像 【建築へ】銅板葺きの街のシンボル、愛媛・あかがねミュージアムがオープン

インバウンド・地域活性

 ◇伝統技能と最先端技術が融合/設計=日建設計JV、施工=三井住友建設JV
 1691(元禄4)年の別子銅山開坑によって繁栄した臨海工業都市の愛媛県新居浜市。「工都・新居浜」の芸術文化の創造・発信拠点となる総合文化施設・美術館「あかがねミュージアム」が7月にオープンした。構想から約40年を費やし、市民と共に創り上げた施設。新居浜市発展の礎となった「銅」の板をふんだんに使用した外観が印象的な街の新たなシンボルが駅前に誕生した。(編集部・山口裕照)
 新居浜市は、四国の瀬戸内海側のほぼ中央に位置する人口約12万3000人の都市。沿岸地帯は、工場群が帯状に形成された四国屈指の臨海工業都市で、住友グループの企業城下町として知られている。
 同市では1974年に展覧会などが開催できる施設の整備構想が持ち上がり、市民との対話と検討を重ねながら、単体の美術館から芸術文化に関する複合施設へと発展。さらにJR新居浜駅の周辺まちづくりの拠点となる総合文化施設として建設されることになった。
 あかがねミュージアムは、その名の通り「あかがね=銅」の板が流線型の外壁に張られているのが特徴だ。使用されている銅板は、銅分99・9%以上の伸銅品で、国土交通省の不燃材料に認定されている。銅板の枚数は約2万2500枚。総重量は約40トンに達する。
 デザイン性の高い建物に合わせ、葺ふき板を菱形に取り付ける「菱葺き」を採用した。今回で7件目の銅板葺きを手掛けたことになるという山下和男氏(三井住友建設)は「葺き方自体は昔からある工法だが、この建物では曲率の異なる三つの曲面を葺いていった。3次元モデルで銅板を曲面に割り付けしたが、図面化できないところもあり、職人が原寸でつくっていった。まさに手造りの建築だ」と振り返る。
 銅板は約500ミリ角で4サイズを用意。複雑な曲面は緻密な計画と、正確な加工・取り付け技術で施工し、美しい銅板葺きを実現した。
 作業所の所長を務めた山下氏は「所長として最後の現場だった。今までで最も広い面積の銅板を葺いた」と胸を張る。銅板の建築は表面が酸化によって色調が変化していくのも見所の一つで、「屋根は20年後、壁は30年後に緑青色に変わっているだろう」と時を経る建築の楽しみ方を語る。
 地域を代表する素材の活用は銅だけではない。愛媛県の大洲地方でとれる「大洲の青石」を外構や外壁に取り入れた。土木資材として使われる蛇籠じゃかごを建築物に採用。金網製の蛇籠の中に青石を詰め、壁に掛けたり、地上に置いたりしている。
 「壁に掛けるのはおそらく初めてだろう」と山下氏。壁掛け用の蛇籠は幅900ミリ、高さ430ミリ、厚さ250ミリ。青石を入れると重さは一つ約200キロになるという。
 現場に従事した鞍野真也氏(三井住友建設)は「かごの表面に現れる青石を美しく見せるため、一つ一つ手で詰めていった。青石の量はかごの容積の7割ぐらい。程よく隙間があり、裏側からライトアップすると幻想的な建築が浮かび上がる」と説明する。銅板もライトアップされるので、昼と夜で異なる表情を見せるのもこの建築の持ち味だ。
 外観を印象付ける曲面は、室内側にも連続している。鞍野氏は「今はボードで隠れてしまっているが鉄骨の工事は大変だった。曲面がすべて違うため、同じ鉄骨部材は一つもなかった」と話す。外壁と連続する室内の壁面だけでなく、シアターや屋内外ステージなども円形に配置。一方、展示室や市民ギャラリー、多目的ホールなどは使い勝手に配慮して四角形に計画されている。
 「3次元モデルを基に鉄骨図面を描いた。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の普及・活用によって、こうした意匠性の高い建築も建てることができるようになってきた」(鞍野氏)。
 伝統技能と最先端技術の融合によって、屋内外とも曲面を基調とする建築が生まれた。駅前にそびえる銅葺きの山並みは、新居浜のランドマークとして世代を超えた新たな芸術文化を創造・発信していくだろう。
 《建築概要》
 【所在地】愛媛県新居浜市坂井町2の8の1
 【建築主】新居浜市
 【設計者】日建設計・トータルメディア開発研究所JV
 【監理者】日建設計
 【施工者】三井住友建設・一宮工務店・白石工務店JV
 【構造・規模】SRC・RC・S造地下1階地上3階建て延べ8894m2

建築へ/あかがねミュージアム(愛媛県新居浜市)がオープン/銅板葺きのシンボル

《日刊建設工業新聞》

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