タイ現地法人が貢献する「前田建設のグローバル戦略」 画像 タイ現地法人が貢献する「前田建設のグローバル戦略」

海外進出

 前田建設が進めるグローバル戦略の一翼を担っているのが、タイの首都バンコクに拠点を置く現地法人「タイマエダコーポレーションリミテッド」。高度成長を遂げるタイ国内の建築事業を手掛けるため、1984年に設立された。以来、日系企業の進出に伴う工場建設などで実績を重ね、これまでに100社を超える取引企業があるという。昨年に設立30周年の節目を迎えたタイマエダを取材した。
 バンコクから南東へ約110キロ。ラヨーン県のヘマラート・イースタンシーボード工業団地に生産拠点を構えるのは、大手自動車メーカー・スズキの現地法人スズキ・モーター・タイランド社。2009年11月にタイマエダの設計・施工で工場建設に着手し、12年3月に生産を開始した。
 敷地面積は約66万平方メートル。これまでの工事で、プレス、溶接、塗装、組み立て、エンジン、樹脂、シートなどの生産施設を新築・増築してきた。建屋規模での生産能力は年産10万台。現在はスイフト、セレリオ、シアズの3車種を生産している。
 スズキ・モーター・タイランド社の清水光俊工場長によると、施設整備では特に「暑さ」と「雨」への対策を強化したという。建物はできるだけ風を通す形状だが、「降り出すとかなり強く降る」というタイ特有の降雨に対応するため、タイマエダとの連携による工夫が随所に凝らされている。
 前田建設がタイで建設工事を初めて受注したのは古く、今から半世紀前の1964年にさかのぼる。ランパン・チェンマイ高速道路(発注・タイ道路局)がそれで、作家・曽野綾子さんが代表作『無名碑』を書くために取材した現場としても知られる。
 その後、ラムドンノイダム(タイエネルギー省)やバンコク国際空港滑走路拡張(タイ空港公団)、ダオカノンーポート高速道路(タイ高速道路公団)などを受注。タイマエダを設立した80年代からは建築工事の受注を増やし、タイ国内でこれまでに受注した工事は土木、建築を合わせて約230件に上る。
 タイは50年代半ばから税制優遇措置を講じるなど海外企業の誘致を積極的に進め、日本からも多くの企業が進出している。近年は2008年のリーマンショックを受けた景気低迷や11年にタイ中部で発生した大洪水などを経ながらも、日本貿易振興機構(ジェトロ)が14年に実施した調査では、4000社を超す日系企業がタイ国内で活動中だ。
 このうち5割近くを占めるのが製造業。自動車産業をはじめとした日系企業の一大生産集積地であり、国内には多くの工業団地が整備されている。こうした日系企業の拠点づくりなどに伴い、日本からも多くの建設会社が進出。その中でタイマエダは日系企業が整備する工場や事務所棟の建築工事などを着実に受注し、これまでに施工中も含めて国内18カ所の工業団地で施工実績を持つ。
 08年7月に赴任し、11年4月からタイマエダの社長を務める生田英晃氏は、「新築工事だけでなく、建設後のメンテナンスなどにもきめ細かく対応するため、バンコクから車で2時半ほどのエリアで事業を行っている」と説明する。
 タイマエダが工事に携わる代表的施設の一つ、ヨコハマタイヤマニュファクチャリング(タイ)工場。バンコクから南に約120キロの位置にあり、原料産地や港にも近いアマタシティ工業団地(ラーヨン県)で05年4月に生産をスタートさせた。敷地面積は約41万平方メートル。
 タイマエダは同工場の施設整備にも一貫して携わり、これまでに四つのフェーズに分かれて発注された大型車、乗用車向けのタイヤ製造施設を建設してきた。04年の着工以来、敷地内にはタイマエダの事務所が設置してあり、現在も延べ床面積約2000平方メートルの倉庫などの建設を進めている。
 経済成長を背景に労働者不足が顕在化しているタイでは、13年1月に最低賃金が全国一律で日給300バーツに引き上げられた。農村部ではそれまでの160バーツから大幅なアップとなり、こうした労働コストの上昇が国際競争力に与える影響を懸念する声もある。
 生田社長は「タイの賃金は高いと言われるが、今後は周辺国も上がっていくだろう。そうした中、電力、高速道路、鉄道などのインフラが充実しているのは、タイの大きな魅力だと思う」と話し、引き続き企業の投資意欲も底堅いと見ている。

スコープ/前田建設の海外展開/タイ現法、日系企業の生産拠点づくりに貢献

《日刊建設工業新聞》

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