インバウンド宿泊施設不足、地方旅館への分散が鍵 画像 インバウンド宿泊施設不足、地方旅館への分散が鍵

インバウンド・地域活性

 ◇新規開発なら5700億円必要
 訪日外国人の増加に伴い、観光客の受け皿となる宿泊施設不足が懸念されている。みずほ総合研究所主任エコノミストの大和香織氏は「2020年に訪日外国人数が2500万人に到達した場合、宿泊施設が4・1万室不足する」と試算。不足分のすべてを新規開発で補うと仮定した場合、約5700億円が必要という。大和氏にインバウンド(訪日外国人旅行)効果の現況や宿泊施設不足への対応について聞いた。(編集部・沖田茉央)
 --訪日外国人が増えている。
 「円安やビザの緩和などが奏功した。訪日外国人客のうち7~8割はアジアからの旅行客。特に海外旅行ブームが起きている中国からの旅行者の増加が著しい。香港・マカオを除く中国の海外旅行人口は全人口の2%台半ば程度。これは1970年代の日本と同水準で、成長の余地はまだ十分にある」
 「首都圏では、東京都を訪れる外国人観光客が最も多いが、最近は東京ディズニーリゾート(TDR)を目的に千葉県を訪れる人が増えている。千葉県と神奈川県は東京にプラスして他の観光地に行きたいと考える旅行者に選ばれる可能性が高い」
 --インバウンド効果が拡大している。
 「14年の日本国内でのインバウンドの消費規模は、前年比で約1兆円増加したが、国内居住者の消費額はほとんど変わらなかった。国内で人口が減少し、数としての購買やサービスの消費に期待ができない中、外国人を呼び込み、消費を促進することは日本の新たな輸出の形になる。14年に増加した中国人観光客が日本国内で消費した金額は、同年に日本で減少した人口(30万人)分の消費額に相当する。人口減による消費の減少を補うという意味で訪日外国人への期待は大きい」
 --今後のインバウンドの行方は。
 「当面は緩やかな円安基調が続くほか、海外での観光需要が高まっているため、訪日外国人は一層増えるとみられる。過去の五輪開催国の事例を見ると、五輪をきっかけにインバウンドの増加幅が大きくなり、その後も増え続けている。世界で海外旅行者が増えている間は、訪日外国人も、それに伴うインバウンド効果も、基本的には成長を続けるだろう」
 --宿泊施設の不足が指摘されている。
 「国内のすべての地域ではないが、観光客が集中する地域では不足が生じる。特に関西ではホテル不足が深刻で、現状でも週末は満室状態が続き、稼働率が高まっている。8月に発表したリポートの中で、2020年に訪日外国人数が2500万人に到達すると仮定した場合、11都府県で4・1万室が不足すると試算した」
 「20年東京五輪の開催期間中も観光客数に宿泊施設が追い付かないという見方もある。大会期間中に経済の押し上げ効果が急激に高まるわけではないが、宿泊施設の不足によって、海外に日本をアピールする機会が失われるとすればもったいない。大会を成功させるためにも宿泊施設の不足を生じさせないことが必要だ」
 --不足を補うための対策は。
 「不足分をすべて新規開発で補う場合、必要な事業費は概算で約5700億円に上る。国内宿泊業の年間投資額は約1兆円なので、それを踏まえれば業界にとっては大きな投資機会となる」
 「ただ、東京は今後のホテルの開業計画がある程度あるが、大阪や京都などの近畿地方では、新規開発計画が少ない。これまでデフレ不況の影響でしぼみ続けてきた宿泊施設の新設や建て替えへの投資が、需要増が見込まれる中で増えてもおかしくない」
 --一方で、供給過剰を起こす地域もある。
 「不足が生じる11都府県を除く36の地域で供給過剰となる可能性がある。現状の統計で年間の未稼働客室は延べ2億室以上あり、特に地方に多い旅館は空室率が高い傾向にある。食事の時間が決まっているなど柔軟性に欠ける点が、外国人観光客に利用しにくい印象を与えている要因の一つだ。旅館側の予約システムの多言語対応が遅れていることや、海外の旅行会社への売り込み不足なども影響し、総合的に見ると外国人観光客の旅館利用は進んでいない」
 「宿泊施設が不足する地域での開発と並行して、地方に観光客を誘導することでミスマッチを解消する取り組みも必要となる。それは約5700億円という事業費の抑制にもつながる。外国人の利用が少ない旅館もサービスの柔軟性を高めれば、観光客の増加が見込めるだろう」。
 みずほ総研が2020年に宿泊施設が不足すると試算した11都府県は次の通り。
 ▽大阪府▽東京都▽京都府▽千葉県▽兵庫県▽福岡県▽沖縄県▽神奈川県▽奈良県▽広島県▽大分県
 (主任エコノミスト、やまと・かおり)

インタビュー/みずほ総研・大和香織氏/訪日外国人増、迫られる宿泊施設不足対応

《日刊建設工業新聞》

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