道路公団民営化10周年…課題は災害と事故対策、債務返済は順調 画像 道路公団民営化10周年…課題は災害と事故対策、債務返済は順調

インバウンド・地域活性

 日本道路公団など道路関係4公団の民営化から1日で10周年を迎える。国土交通省は高速道路6社(東日本、中日本、西日本、首都、阪神、本州四国連絡)と日本高速道路保有・債務返済機構が民営化後に取り組んできた成果や課題などを点検・検証した上で、今後実施すべき取り組みなどを整理。安心・安全を最優先にハード・ソフト対策を一段と強化するとともに、ストック効果を最大限に発揮するため、高速道路を賢く使う取り組みを積極展開する方針だ。(編集部・遠藤奨吾)
 民営化10年を迎えるのを前に国交省は今春、有識者会議「高速道路機構・会社の業務点検検討会」(座長・根本敏則一橋大大学院教授)を発足させ、高速道路各社と機構にヒアリングを実施。民営化後の成果や課題を検証してきた。
 民営化の主な目的は、▽有利子負債の着実な返済▽早期かつ極力少ない国民負担による整備▽民間のノウハウを取り入れた多様なサービスの提供。このうち、民営化時に約37兆円あった有利子負債は約29兆円まで減少した。
 9月29日に行われた国交省の幹部と高速道路機構、高速道路6社のトップが出席した連絡会議で、機構の勢山廣直理事長は「債務を順調に削減できたのは、低金利という金融情勢に恵まれたほか、多様な資金調達、堅調な交通量、6社の建設や管理面でのコスト縮減努力などの成果だ」と強調した。
 現在の高速道路の供用延長約1万キロのうち、民営化後に開通した約1000キロの建設では約7400億円のコスト縮減を図り、開通時期も平均4カ月の前倒しを達成した。ネットワークの拡充により、沿線では民間の物流施設や工場などの立地が進む。年間の利用台数は33億台に上り、民営化後、着実に増加してきた。
 高速道路各社のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)事業では、店舗を多様化させた効果などもあり、売上高が民営化時の4000億円から4900億円へと伸びた。最近は災害時の防災拠点としての機能強化にも力を入れている。
 東日本高速会社の廣瀬博社長は「高速道路利用者に立ち寄りたいと思われるような個性的なSA・PAの施設づくりに引き続き取り組み、地域の発展にも貢献していく」と意気込みを語った。
 一方、民営化後に顕在化した主な課題に、重大な災害(東日本大震災、大雪など)と事故(笹子トンネル天井板落下事故、高齢者の逆走事故など)が挙げられる。
 より安全・安心な道路交通サービスを提供するため、国は道路法などの改正によって構造物の定期点検を義務化。老朽化対策の計画的な推進や大規模更新事業の実施を後押ししている。
 連絡会議で中日本高速会社の宮池克人社長は「この10年で、(山梨県の中央道で12年12月に起きた)笹子トンネルの天井板崩落事故が最大の反省点。安全を最優先させる企業文化の醸成に向けて不断の取り組みを続けていく」と決意を示した。
 阪神高速会社の山澤倶和社長は、今年が阪神大震災から20年の節目に当たることに触れ、「阪神高速が壊滅的被害を受けた震災で得た知見とノウハウを若い世代に確実に継承するとともに、訓練を愚直に積み重ね、大規模災害への備えを万全にしたい」と強調した。
 高速道路各社は本年度、大規模更新・修繕事業に本格着手した。交通や社会への影響を最小限に抑えることを重視し、工期短縮やコスト縮減につながる新技術の開発などに積極的に取り組む。
 こうしたニーズへの対応強化の一環で、機構が各社の新設・改築事業を中心に行っているコスト縮減や技術開発の促進を目的としたインセンティブ助成制度が、更新・修繕事業でも使いやすくなるように、助成割合の拡充や手続きの簡素化などの運用改善を進める。
 本四高速会社の三原修二社長は「海峡部に架かる長大橋という厳しい環境下でメンテナンスを行うのも大変。まずは予防保全を効果的、効率的に行うことが基本だ」と説明。安全・安心、快適なサービスで利用者の信頼を獲得しつつ、200年以上にわたる長大橋の長期利用に挑戦する考えを示した。
 有識者会議は検証結果の一つとして、ガソリンスタンド(GS)の間が100キロ以上離れた区間が全国の高速道路に83区間ある現状を、安全走行に必要なサービスを確保する上で問題があると指摘した。
 解決策の一環で西日本高速会社は、高速道路外のGSを活用する社会実験を今年4月から実施している。同社の石塚由成社長は「大規模災害時の対応などを考慮し、高速道路上へのGSの整備も検討する必要がある。社会的な期待にこれまで以上に柔軟に応えていく」と一層のサービス向上に意欲を示した。
 大都市圏の高速道路の料金体系については、首都圏で先行的に現行体系が見直される。16年度からは対距離制を基本とし、発・着地が同じなら途中のルートが異なっても料金を等しくする。将来的には混雑状況に応じて料金設定を機動的に変える仕組みの導入を目指す。
 首都高速会社の菅原秀夫社長は「より効率的・効果的な利用という観点で導入される新料金体系への円滑な移行に向け、万全の体制で備えを進める」と述べた。
 有識者会議の根本座長は「料金割引や無料化論争の過程で、国民は高速道路が税ではなく利用者の料金で賄うべきものだということを学んだ」と指摘。「永久有料化に向けてかじを切るべき時期に来ている」と持論を展開した。
 これらの意見を踏まえ、太田昭宏国交相は「この10年で新たな課題も生まれた。国としても支援体制を強化していく」と表明。高速道路各社には防災・減災や老朽化対策、ストック効果の最大化、入札契約の透明性確保などさまざまな課題に連携して取り組んでいくよう要請した。

道路公団民営化から10年/ストック効果最大化に注力/安全最優先で維持更新

《日刊建設工業新聞》

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