MBAを持つシニアソムリエ、北海道ワインを世界に 画像 MBAを持つシニアソムリエ、北海道ワインを世界に

インバウンド・地域活性

 MBAをもつシニアソムリエとして、北海道のワインと食をマッチングし、その魅力を伝える活動をしている阿部眞久氏。幼少時から現在、未来について紹介された。

「今はおとなしそうな顔をしてますけども、子どもの時はバス停を動かしたり、給食に出た栗きんとんを、筋斗雲と勘違いして天井に投げるといった訳の分からない事をやっていました(笑)」。

 阿部氏は宮城県仙台市出身。父が工学博士という事もあり、厳しい教育方針の元で育った。この家庭環境の中で、食べ物に対する憧れが強く、友人たちと比較して悔しい思いもした。

「小学5年生の頃から、札幌の祖父母のもとに新幹線、青函連絡船、特急などを乗り継ぎ、一人旅を何度もしました。時刻表マニアになり、駅弁を食べてみたいという食への渇望が生まれたような記憶があります。テレビを見てはいけなかったので、勉強をするふりをして食に関する漫画や本を読むようになりました。同じころ、マムシを捕まえるとお金をもらえると聞きました。でも、マムシに噛まれるのは怖いので調べていくと、血清がいい、それにはアルコールや柿渋が必要、という事がわかり、今度は漢方薬に興味を持つようになりました(笑)。子どもの時からずいぶんマニア的なことをやってきました」

 やがて、早く家や学校を飛び出したいと思うようになる。進学校の高校に通っていたが、学校に許可なくリゾートホテルで働き、そこで憧れていたフランス料理やワインと巡り合う。

「このワインが自分の中で非常に美味しく感じました。学校を飛び出すようにしてフェードアウトした人間ですが、これを極めてソムリエの資格を取れば、ホテル業界の中でそれなりの事ができる。夢のまた夢と思ったがそれを目指すようになりました」

 21歳で結婚、1997年の23歳の時に受験年齢最年少でソムリエの資格を取得、1999年秋に北海道のワインに巡り合う。それまで日本のワインは一切飲まず、フランスのワインしか評価しなかった考えが一変する。

「北海道のワインを飲んで非常に衝撃を受けました。フランスのワインはみんなが知っている。この旨い北海道のワインは、これから世界に知らしめていける。ソムリエとしても、行ったこともない土地の話をして紹介するのではなく、自分でワインと食の相性を作っていけるという風に思いました。26歳の時に、北海道のワインで世界征服をしたいと思いました。世界征服という表現は、自分がその音楽や世界観にすっかりファンになっていた聖飢魔IIの影響ですけどね(笑)」

 当初は勤めていた小樽の「北海道ワイン(株)」だけを広める活動や、国内の中でも北海道のワインだけを正当化するようなことを発信していた。しかし、十数年がたち、自身が好きなのは、北海道の食・観光・ワインを組み合わせる事であり、産地として知ってもらうことが大事だと考えるようになる。当時、まだ北海道はワイン産地として認知されておらず、ワイン会社に技術はあるがマーケティングが伴っていなかった。そこで阿部氏は広報やマーケティングを支える人になりたいと大学で学ぶことを決意する。

「高卒の自分にはマーケティングの能力も、起業する裏付けもない。そこで小樽商科大学に入学しました。32歳の社会人学生として18歳の学生たちと一緒に並ぶわけです。最初の半年間は辛かった。定時で帰るので、会社からも今さらあいつは何をやっているんだと言われますし、昇進や昇給も凍結されました。しかし小樽商科大学ビジネススクール(大学院)の存在を知り、自分の目標が大学院でマーケティングを学び、起業することに切り替わりました。学部の授業計画や成績を会社の社長や上司などにメールし、勝手にアピールしました。その結果、ビジネススクールには組織推薦が認められ、ようやく胸を張って学校に行けるようになりました」

 戦略、ビジネスプランニング、プレゼンテーションはできるが、経理や総務、労務管理は全く経験がない阿部氏は、ビジネススクールの仲間2人と在学中から北海道のワインに関する起業を計画した。自分とは違う能力を持ち、より優秀な人と組むという学びは今に繋がる大きな成果だった。

「モチベーションを保つのに役立っていたのが、2012年の金環食です。この日までにビジネススクールを終了してMBAを取得し、会社からは独立起業することを許してもらうことを目標にしてきました。念願叶って、全てを業界の仲間、同業他社の皆さんの了解も得て実現することができました。日付が入った目標だったから良かったのかな」

 2013年に独立し、「NPO法人ワインクラスター北海道」を設立。2015年4月には、北海道ワインの広報機関として小樽に「北海道・ワインセンター」を開設し、阿部氏とワイン専門家が試飲やセミナーに随時対応している。現在、阿部氏はレストランと連携したレストランリザベーションのサービス提供や、講演、食育活動、コンサルティング、北海道のワイン業界と行政機関をつないで道産ワインを広める受託事業に力を入れている。

「独立前も後も、目標は一緒。ワインを通じて北海道の経済の活性化、北海道の新しい食文化を創造しい。世界から北海道のワインと食を楽しみに訪れるツーリストに対する情報とサービスの発信拠点として北海道ワインセンターを運営していきたいと思っています」

 同センターでのワインの試飲と講座は外国人観光客にも好評だという。これからどんな戦略で北海道のワインと食を世界に伝えてくれるのか、北海道のワインツーリズムの発展を支える立役者の一人として期待したい。

【楽しい100人 Vol.16】MBAの知識で北海道のワインと食の魅力を世界に!……NPO法人ワインクラスター北海道代表 阿部眞久氏

《RBB TODAY》

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