【建設業「命」の現場で 1】第1章 被災地にて/福島・浜通りを生きる 画像 【建設業「命」の現場で 1】第1章 被災地にて/福島・浜通りを生きる

インバウンド・地域活性

 鳴り響く法螺貝ほらがいの音、闊歩かっぽする450の騎馬武者たちー。福島県南相馬市で7月25~27日、今年も相馬野馬追が開かれた。同市で福島第1原発事故に伴う除染業務に従事する石川建設工業の環境部主幹課長・渡部達也は、相馬野馬追の間、表情が変わる。
 相馬野馬追は、福島の太平洋側、浜通り地方に古くから続く伝統行事で、平将門による軍事演習が起源とされる。2市3町2村にまたがる地域が「郷」と呼ぶ区割りに分かれており、各郷から騎馬隊が出陣。数百の騎馬武者が一堂に会する神旗争奪戦や、馬を素手で捕らえて奉納する神事などが繰り広げられる。
 渡部は、最南部に位置する標葉しねは郷の一員で、神事などの節目に法螺貝を吹く螺役かいやくを務める。精神を集中させ、皆の無事を祈りながら、力強く吹き鳴らす。
 関係市町村の大部分は、東日本大震災での福島第1原発事故の影響を大きく受けた地域と重なる。標葉郷では、今年も避難先からの集合となった。「年に一度しか会えない人もいるが、相馬野馬追の時は、皆が標葉郷の人間に戻る」と渡部。それは、かなわぬ帰郷につながるひとときでもある。
 渡部は、福島第1原発のある大熊町の下野上地区で生まれ育った。今は相馬市に住み、南相馬市の職場に通う日々だ。勤め先が除染業務に乗りだす検討段階から携わっており、現在は生活圏の除染業務の現場管理などを担当する。
 仕事では、気苦労も多い。可能な限り除染を徹底してほしいと願う住民と、定められた基準との間に板挟みになる場面もある。「私もこの地域の住民なので、(空間放射線量を)限りなく低くしてほしいという気持ちも分かる。しかし、まずは全体を下げていかなければならない。感情論になってしまう場合もあって、そこが一番苦労する」。
 除染作業では、マスク着用の徹底など安全面にも気を配る。「放射能も放射線も、きちんと管理すれば怖くないが、慣れが入って油断すると怖いものに変わってしまう。用心するに越したことはない」。そうした意識は、渡部に染み込んでいる。福島での除染作業のために全国から多くの人が集まっており、「健康な状態でお戻しするのが自分の役目」と話す。
 「生まれ育った大熊町に戻りたい」。場所こそ異なるが、望郷心と今の仕事はつながっているという。
 除染の仕事にこだわる理由は、もう一つある。それを渡部は「後ろめたさ」と表現する。その思いは、ある場所に起因している。震災の日にも行く予定にしていた、何もなければ今もいるはずだった場所ー福島第1原発だ。=敬称略(毎週火曜日掲載)

東日本大震災5年-建設業「命」の現場で・1/第1章・被災地にて/福島・浜通りを生きる

《日刊建設工業新聞》

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