マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語…その2 画像 マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語…その2

インバウンド・地域活性

マツダ防府中関工場の内部を見て、その技術革新ぶりと、それを実現した技術者たちの熱意が伝わってきた。それと同時にSKYACTIVテクノロジーを陰で支える生産技術こそが、マツダの原動力なのではないか、という気がしてきた。

モノ造り革新とは、燃費にも優れ走りの楽しいクルマを効率良く生産するための号令のようなもので、全社で一丸となってそれを達成したからこそ、現在のマツダの復活ぶりがあるのだと思った。

そうは言うものの、新型車の導入であっても生産の現場は確実な方法、品質を担保できる方向性を重視するのが普通だ。それを高度な生産方法の確立、更なる精度の追求といったリスクや困難を負うのは、かなりの覚悟が必要だ。そのモチベーションはどこから来るのだろうか。

「最初は現場もそれほど積極的ではありませんでした。しかし、モノ造り革新を導入して、明らかに商品のクオリティが上がり、ユーザーから評価される声が現場に届くようになったことで、モチベーションにつながっていったのです」。こう答えてくれたのは、防府工場長の向井武司氏である。向井工場長は執行役員でもあり、防府地区の2つの工場をまとめ上げている人物。その穏やかな話しぶりから工場の現場の人間たちに全幅の信頼を寄せていることが伝わってくる。

中関工場では1000分の1ミリの精度を実現し、従来の公差を半分に詰めたと聞いた。それは驚異的な技術力であるのは間違いない。だが、それによってどういう効果があるのだろうか。

「公差を半分にする、というのは従来の公差の範囲をより中心に狭める、ということです。公差の範囲内でも中心値にあるものと、外側にあるものでは意味合いが違ってきます。そうした精度は操作フィールなどには現れない部分ですが、品質には重要なのです。歩留まり性が格段に向上して不良品はゼロになりました。これによってエネルギー効率が高まり、結果としてコストダウンにもつながったのです」

何でもこだわって、あらゆる部分で精度や品質を追求すればいい、というものではない。それでは生産コストが際限なく高まっていき、販売価格や利益を圧迫することになってしまう。それでは結果的にはユーザーのためにもならない。

「設計側と生産側が競い合って新しいクルマを開発していく上で、お互いに譲れない部分を出し合って、それを共有するようにしました。譲ったことでいいものが出来なければ、作る意味がないのです」

「2008年から中関工場では、こうした考え方を導入しました。そして成果を上げていって、市場で評価を受けたことがやる気につながりました。そうなると、現場だけで勝手にレベルアップしていって、毎週のように自分たちで技術課題を出してチャレンジしていくようになったのです」

そんな生産現場のモチベーションの高さは、今回の取材でも伝わってきた。ミッションケース加工ラインでも、モノ造り革新への取り組みぶりを丁寧に解説してもらった。組み立てラインの工程では、まるで各人が競い合っているかのように、俊敏な動きで正確に組み立てをこなしていく。それだけではない。我々取材陣が通ると、誰もが丁寧な挨拶をしてくれる。工場見学に備えたスタッフや、たまたま手が空いている状態の人間だけでなく、移動中や保守管理のスタッフも一様にゲストを迎えてくれるのだ。

それらは活気があるとか、統制が取れているというレベルではない。社員1人1人が「モノ造り革新」を実現するために必要なことを、自発的にやっている。そして自分たちの仕事に、行動に、自信とプライドを持っていることが伝わってくる。こんな工場は今まで見たことがない。それも日本有数の自動車メーカーの大規模な工場としては、あり得ないほど個々がしっかりと活き、それでいて統一感が高いのである。

「こうした体制作り、社員の意識の統一ができたことこそが、モノ造り革新の1番の成果ではないかと思っています」

マツダが作り上げたクルマの完成度、技術力の高さは誰もが認めるところだ。しかし、それを成し遂げているのは製品を開発しているエンジニアリングだけではなかった。マツダの工場には「志」が貫かれているのを感じた。

【マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語】その2…モノ造り革新の成果は、工場全社員の意識改革

《高根英幸》

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