マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語…その1 画像 マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語…その1

インバウンド・地域活性

ND型『ロードスター』の6速MTをはじめとした、マツダ車のトランスミッションを生産する防府地区の中関工場を訪れた。ここをマスコミに公開するのは初めてのことだと言う。それどころか、マツダ広報部の人間ですら今回の取材ツアーによって初めて来られたとの声も聞く。

防府工場は西浦地区にある車両工場と、中関地区にある変速機工場の2拠点で構成されている。中関地区の変速機工場はマツダの全生産台数の83%に変速機を供給しており、トランスミッションのギアに関してはほぼ全量を生産しているそうだ。中関工場の各加工工程はエリアで区切られており、ダイキャストライン、ミッションケース加工ライン、ギア加工ライン、熱処理ライン、組み立てラインに分けられている。

ダイキャストラインはアルミ合金のインゴットを溶かす溶解炉が3基、ダイキャストマシンが9台、ショットブラスト3基で構成されている。ダイキャストマシンは型締め力が2000tもあり、1台で住宅並みの大きさがあるほど、かなり大型のもの。これはトランスミッションのケーシングという比較的大きな鋳造製品を精密に作り出すために必要なものだ。

精密な鋳造をする目的は、軽量化だ。SKYACTIV-DRIVEの横置き6速ATのケーシングは従来の5速ATと比べ薄肉化を図ることによって大幅な軽量化を果たしているそうだ。従来の5速AT用が13.5kgなのに対し、10.5kgと2割以上も軽いと言う。

これがロードスター用のMTとなると、前後方向に長い縦置きだけに、軽く作るのは非常に難しい。薄くて大きい鋳造製品を鬆(ス=素材中の気泡など)などの欠陥なく作り上げるのは非常に難しいのだ。けれども中関工場では横置きATのケーシング鋳造で培った技術にさらに磨きをかけ、この困難な課題をクリアしている。

具体的には、これまで以上に金型内の真空状態を高め、高速で充填することにより凝固が始まる前にアルミ溶湯を隅々まで行き渡らせることを実現した。これが結果的には製作時間の短縮にもつながり、生産スピードは従来の1.5倍と、世界ダントツレベルのサイクルタイムを実現しているそうだ。

続くミッションケース加工ラインでも、革新ぶりを感じさせてくれた。鋳造された部品に穴や溝などを刻むことでケースとして完成させるのだが、何と加工要素を大幅に削減し、単純化することでスピードと精度を高めているのである。

従来は同じ方向で一気に複数の穴開け加工が一気にできるよう専用工作機械を使用し、45工程をいくつもの専用機で加工することにより行っていた。しかし専用機ではフレキシブル性が低く、各工程の機械への脱着にも時間がかかる。そこで設計により何と工程を2つにまで単純化したのである。軽量化を追求しながらそこまで単純化できるのかと、にわかには信じがたいほどの革新ぶりだ。

2工程と言っても刃物が仕事をするのが2回だけという意味ではなく、治具にミッションケースを固定したまま、刃物を交換したり治具を回転させることで続けて切削加工を行い、治具から取り外して、また別の工作機械に治具を介して取り付け、加工する。この工作機械への脱着作業が2回で済む、ということだ。

これによりミッションケース加工ラインに持ち込まれて工作機械への取り付けを開始してから、すべての加工作業が終わるまでの時間の中で、切削を行っている正味の加工時間の割合は89.3%にも高まっている。従来の専用機による45工程作業では、正味加工時間は48%でしかなかったから、半分以上は治具への脱着や搬送に掛かっていたのだ。

しかも加工後、そのままマシニングセンタで加工部分の精度を測定するインライン測定を実施。治具の脱着作業も少ないこともあって、非常に高い精度を確保出来るようになったそうだ。工程を単純化、共通化することで混流生産をスピーディにするだけでなく、精度も高まったのだ。

ダイキャストラインでも鋳造の精密化がスピードアップにつながったように、ここでもスパイラル効果で生産効率と精度が高まっている。これが生産効率と品質の一挙両全なのか。モノ造り革新の効果を実感させられた気がした。だが、それは極めて表面的なものに過ぎなかったことを、この後教えられることになる。

【マツダ ロードスター 用6速MT 開発物語】その1…世界に誇る鋳造技術、マツダ中関TM工場

《高根英幸》

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