広島市・土砂災害から1年―防災・減災研究活発化(下)土中分析、前兆捉える 画像 広島市・土砂災害から1年―防災・減災研究活発化(下)土中分析、前兆捉える

インバウンド・地域活性

 土砂災害は、発生の危険性の高まりを判断するのが難しい。目に見えない土中の変化を経て起こるためだ。発生の詳細な仕組みも解明されていない。だからこそ発生の前兆を捉えて住民に避難を促すことが強く求められており、土中の状態を計るセンサーの開発や、ツイッターを活用する研究が進んでいる。 防災科学技術研究所は、9月をめどに人工の土砂斜面を豪雨で崩壊させる実験を行う。最大300ミリメートルの時間雨量を再現する実験施設を利用。土中にセンサーを埋め、崩壊するまでの地下水位の時間変化などを検証する。 豪雨による土砂災害は、土中に水がたまり浮力が働いて起こる。地下水位の測定は災害の前兆を捉える上で重要と考えられるが、「斜面のどこを計り、測定値をどう解析すれば効果的かは分からない」(防災科研の酒井直樹主任研究員)。特にセンサーは1台数十万円以上と高価。普及には、センサーの設置台数を減らす必要がある。捉えるべき情報を絞り、土砂災害の発生との関係を導く手法が求められる。 防災科研は、データ解析を扱う総合電機メーカーなどの技術力に期待しており、企業と連携して崩壊1時間前の前兆を把握するセンサーを3年以内に構築したい考え。 すでに、土砂災害関連のセンサー開発に取り組むのがNECだ。同社は、降雨量で変わる土砂の重量や水圧などを土砂の水分量から算出する技術を開発。水分量を実測して各指標を導きだし、危険性の算出で一般に使われる予測式に指標を当てはめて高精度に判定できる。 この仕組みによる土中水分計を2015年度内に実用化させたい考え。指標ごとのセンサーが不要で、設置数が従前比3分の1程度で済む。防災科研が昨年行った実験などで技術の有効性を検証した結果、「危険」と判定した10―40分後に斜面が崩壊することを確認。今年6月には、島根県津和野町で実証実験を始めた。ただ、水分計は耐用年数が2年程度で長期間の測定に向かないため、危険性の高い箇所などでの限定的な利用が想定される。 このため、NECは劣化しにくい振動センサーの技術の有効性も実証実験で検証中。豪雨などによる地中に伝わる振動を測定し、その違いから土中の水分量を推定、危険性を判定する。長期間設置できるセンサーとして15年度内の実用化を目指す。 一方、国土技術政策総合研究所は、富士通研究所(川崎市中原区)と共同でツイッターの「つぶやき」を活用する。土砂災害の前兆として知られる「山鳴り」という言葉などを含むつぶやきが、過去の土砂災害時に見られる。国総研などは豪雨関連のつぶやきを集め、それに含まれる言葉などから発信位置を市町村単位で推定。つぶやきの量の時間変化などで、危険性の高まりを把握する技術を構築する。例えば、豪雨関連のつぶやきが多い地域で「山鳴り」を含むつぶやきを見つけ出し、避難勧告の判断に利用する。 現在、過去の土砂災害時のつぶやきの時間変化を分析中。国総研土砂災害研究室の國友優室長は、「土砂災害の危険性の高まりとの関連性が見つかれば、発生予測に使える」と期待する。 土砂災害の危険性を知らせる情報としては、「土砂災害警戒情報」が全国で運用されている。ただ、危険性が表れた初期に発信し、それ以降の危険性の高まりは判断できない。また、降雨量だけで危険性を推定するため精度が課題。土中の情報やつぶやきは、新たな判断指標になり得る。それぞれが確立され、補完し合うことで高精度な情報提供が期待される。

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《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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