軍艦島、風化対策を本格検討……学会チームが工法提案、方針決定へ 画像 軍艦島、風化対策を本格検討……学会チームが工法提案、方針決定へ

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 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産として7月に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼 造船、石炭産業」。幕末から明治期にかけて日本の重工業が発展した歴史を示す8県の23施設のうち、軍艦島の通称で知られる長崎市沖合の「端島炭坑」には、日本最古のRC造集合住宅が現存する。数十年前に廃虚となった軍艦島の施設は風化が進み、保全対策などで早急な対応が求められている。軍艦島の島内には、日本最古のRC造集合住宅など大正~昭和期の建築物が数十棟立ち並び、その独特の景観が通称の由来にもなっている。炭坑閉山後は廃虚となり、40年余り風雨や波にさらされ、塩害などによる劣化が目立つ。今回、世界文化遺産に登録されたのは、港湾設備と初期の生産施設だけで、年代が異なる建築物は対象外。しかし、RC造集合住宅は軍艦島の最大の魅力でもあることから、長崎市は島内に残る施設群の全体的な保存を目指している。保存に要する費用は最大160億円と試算される。市の関係者は「財源確保のめどが立たず、劣化が激しい施設は保存を断念することもあり得る」と話す。市は年内にも保存方針を定める見通しだ。
 これほど風化したRC建築は世界的にも珍しいとされ、歴史的価値を損なわずに補修・補強するのは簡単ではない。外観的に目立つ補強方法を採用すれば景観を損ね重機を使うような作業も難しい。廃虚をどの程度の状態にまで復元するかも明確にする必要がある。長崎市は11年に日本建築学会に対し、軍艦島のコンクリート構造物群の劣化・損傷状況の評価や将来予測、補修方法の提案に関する調査を委託。これを受けて学会では専門のワーキンググループ(WG)を設置して調査を実施した。世界文化遺産への登録決定後、WGのメンバーである芝浦工業大学の濱崎仁准教授は、軍艦島のRC造建築物の補修工法について研究成果を公表した。補修工法の検討に当たっては、コンクリート崩壊の根本原因を治療する「鉄筋の腐食抑制」に主眼を置き、さまざまな補修材料・工法を施した試験体による暴露実験を現地で実施。個々の試験体で鉄筋の腐食抑制効果や補修材料の浸透状況などを評価・分析してきた。
 提案された工法では、歴史的価値を損なわずに経年劣化を抑えるため、防さび剤の亜硝酸リチウム(LiNO2)を活用。防さび剤の含浸性や注入工法に着目し、補修の有効性と適切な注入量などを確認した。コンクリートの外観の色や形状を変えることなく、鉄筋の腐食を効果的に抑えることができるという。WGでは、同工法を有力な補修方法の一つとして、調査研究を引き続き進めている。軍艦島での補修効果が実証されれば、歴史的価値が高いRC建築物の保存・修復だけでなく、一般の近代建築物やインフラ全体の長寿命化にも役立つと期待されている。劣化が進む文化遺産の保全に対して、国も協力姿勢を強めている。下村博文文部科学相は「関係自治体や内閣官房と連携しながら、人類共通の宝である貴重な世界遺産の保護に万全を期す」と表明。軍艦島などの遺産群を適切に保存するための体制強化とフォローアップに力を入れる考えを示した。国内では「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が、16年の世界登録に向けてユネスコ側に推薦済み。同年には東京・上野の国立西洋美術館を含む「仏建築家ル・コルビュジエの建築物群」(フランス推薦)も審議される予定だ。世界文化遺産への登録が相次ぐ中、登録後にあわてぬよう、観光資源としての活用方策と併せて、最適な保全のあり方も事前に十分検討しておく必要がありそうだ。

世界文化遺産・軍艦島/建築群の風化対策で検討本格化/建築学会チームが工法提案

《日刊建設工業新聞》

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