【インタビュー】天津事故の影響は?外販比率は? アイシン精機 伊原新社長に聞く 画像 【インタビュー】天津事故の影響は?外販比率は? アイシン精機 伊原新社長に聞く

マネジメント

8月18日、この6月にアイシン精機の新社長に就任した伊原保守(いはら やすもり)氏がメディア各社との共同インタビューに応じた。

伊原氏は岐阜県出身、1951年生まれ。1975年に当時のトヨタ自動車販売に入社。2004年にトヨタ自動車のグローバル調達企画部部長、事業開発部部長を経て同年常務役員に就任。2007年にトヨタ常務役員を退任後、トヨタ輸送の取締役社長に就任したが、2009年の豊田章男社長就任後に呼び戻されるかたちでトヨタ自動車の専務取締役となり、2013年には取締役副社長へと昇格し新興国を統括する「第2トヨタ」を担当した。2年の任期を終えて2015年の6月にトヨタ自動車相談役と兼務するかたちでアイシン精機の取締役社長に就任した。

伊原新社長との質疑の主な内容は次の通り。


◆天津の爆発事故ではケガ人も、中国市場の動向には今後も注視

----:先日、中国の天津で爆発事故が発生したが、アイシングループでの被害は把握しているか。

伊原:天津の爆発については、14名の方がケガをされたという情報が入っている。現地従業員の寮が爆発現場の3kmほどの距離にあり、1人が骨折、残りは軽傷とのこと。

----:その中国は景気の減速もささやかれているが、この巨大市場をどのようにみているか。

伊原:(グループ会社の)アイシンAWはトヨタ自動車向けのみならず中国地場の民族系メーカーにかなりの量のATを売っている。「もっと売ってください」という要請もひっきりなしに来ているくらいだ。したがって中国のAT市場は当社グループにとって重要なウェイトを占めている。

中国の経済成長は鈍化しており、2014年の5月くらいからトヨタ車の販売も鈍ってきた。一汽トヨタはいち早く計画生産に入り、在庫の積み増しをせずに済んだ。中国は市場そのものの減速の話と、合弁相手との関係という2つのリスクがある非常に難しい市場。市場に合った需給政策をとらないと乱高下を招くので、慎重に取り組んでいく。


◆将来的に最も伸びる自動運転関連技術への取り組みは

----:現在グループとしてトヨタ以外で4割弱ほど売上を占めているが、外販比率を増やす、あるいは減らすといった方向性は考えているのか。

伊原:正直に言って外販比率をどうしたいとかは考えていない。今は自分の足元の会社がどうなっているかを知ることと、グループ会社個々の競争力がどうなっているかを判断することがファーストステップ。各々の実力が見えてくれば、その上でそこから目標を設定し課題を作り、「2020年ビジョン」(※2012年に発表した2020年までにグループ総売上3.3兆円以上、日本以外の売上高50%以上を目指す取り組み)を変えるべきか、そのままで行くべきかを決めて行きたい。

----:部品メーカーの視点からみたトヨタの課題は。

伊原:(トヨタの)中にいても外にいても同じ課題が見えている。それは、「大企業病」にならないこと。私はずっと前から「小さなトヨタを作れ」と言ってきた。意志決定の面で遅くなることを危惧している。アイシングループでもそれは同じ。

----:自動運転や高度運転支援が非常に注目されているが、その中でアイシングループの強みをどのように発揮していく考えか。

伊原:自動運転は、将来的に最も伸びる分野だと思っている。当社でも駐車を支援するIPA(インテリジェント・パーキング・アシスト)という技術を持っているが、これもひとつの自動運転。こうした技術を将来的につなげて提案していければ。ただ、どの分野に注力していくべきかはまだ具体的に見えていないので、カーメーカーなどの動向もみながら当社が何をしていけるかを考えていきたい。


◆競争力ありきで考えたサプライヤー再編

----:系列の再編も含めて、サプライヤーがこれらの競争力を上げていくために必要なものはなにか。

伊原:系列サプライヤーの再編に関してはトヨタ自動車にいるころから絡んでいたが、国際的にトヨタグループが作っている部品に競争力があるかないか、という話がスタートした。シートは(国際競争力の面で)負けてますよね、どうしたらいいですか? 上物と下物と開発がバラバラですよね。スルーの生産もしていないですよね。アドヴィックスへのブレーキ事業集約も同様の発想。再編ありきではなく、競争力ありきで考えた。

----:円安基調が強まっているが、生産を国内に戻すという可能性は。

伊原:為替レートが円安基調になったからといって日本に戻すということは考えていない。これから受けたものに対して日本から送った方がいいか海外で作った方がいいかということは検討の対象だが、すでに現地で生産しているものを日本に戻すことはない。


◆“幅の広さ”と“小さなマネジメント”が強み

----:アイシンに来てみて初めて見方が変わったことは。

伊原:(トヨタで)20年間調達に関与していて、部品メーカーについてはよく知っているつもりだったが、アイシンに来てビックリしたことが2つある。まずひとつは扱う部品の範囲が非常に広いということ。

ボディ系、トランスミッション、ブレーキ、サスペンション、ステアリングシャフト、スライドドア、ECU、さらにはベッドとかコジェネ(熱併給発電)などのBtoC向けもある。さらにテストコースが3つもあり、カーメーカー並みの耐久テストができる設備も揃えている。先端研究開発機関は米国・日本・欧州に持っている。これだけの幅をもっているのはM&Aで大きくなったところ以外にない。

もうひとつ驚いたのは、マネジメントの形態。どんどん会社を作って分離していく。ボディ系の会社、ユニット系の会社、グループ内には連結子会社が181もある。会社を小さくして作れば専門集団による早い意志決定ができる。小さなマネジメントの強みを感じている。

----:反対に、これだけのリソースをどう活かしていくかも課題なのでは。

伊原:トータルのパッケージの提案ができていないという部分はある。これだけのものをもっているのであれば、たとえば電動オイルポンプひとつ取ってみても、グループでつくっている周辺のパーツを組み合わせることでヒートマネジメントをセットで提案できる。「燃費向上に寄与します、適合試験も全てしてあります」とオファーすればカーメーカーは喜ぶだろう。また例えば海外では、アイシン精機が大家として土地をまとめて確保して、そこにグループ会社のサプライヤーパークをつくるといったようなこともインドやブラジルなどではやっている。


◆トヨタ向けもトヨタ以外も両面で取り組む

----:世界的な競争が激化する中では優秀な人材確保と育成が急務だと思うが、就任にあたって人材育成に向けた考えは。

伊原:調査等もおこなっているが、愛知県での知名度はあっても全国区で広く知られているかというとそうではない。ものづくりにこだわりつづけ、会社として社会貢献もしているので、企業イメージを上げていくことの必要性を感じている。企業広告も含めて取り組んで行く。

----:トヨタ以外の他社との取り引きが増えていくことでトヨタへの依存度が下がっていくことになるのか。

伊原:現状のトヨタ依存度は6割。トヨタ以外が増えていくとトヨタと離れていくことになるのかというとそうではない。他社向けの製品が売れれば売れるほどコストが安くなる。これが最大の競争力強化。「トヨタを離れてどこか行ってこい」ではなくて、他社販も同義でいっしょにやっていくことが競争力に繋がる。

----:一番競合として見ている会社はどこか。その理由は。

伊原:先ほども述べたように、取り扱う分野がここまで幅広い会社は他にない。個々の分野分野でコンペティターはいるが、技術力で戦っているところもあれば、価格で戦っているところもある。その意味で直接の競合はないという認識だ。

【インタビュー】アイシン精機 伊原新社長「専門家集団の強みを発揮し、グループ力で競争力強化目指す」

《北島友和》

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