建設産業での担い手確保・育成――担い手3法の本格運用元年、国交省 画像 建設産業での担い手確保・育成――担い手3法の本格運用元年、国交省

人材

建設産業で目下の最重要課題とされる「担い手の確保・育成」。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)をはじめとした「担い手3法」が本年度から本格運用され、官民で技能労働者の処遇を改善する方策や企業が適正利潤を確保できるようにする取り組みが具体化している。今後の人口減少を踏まえ、建設産業の長年のテーマである生産性向上を実現する機運も高まっている

国交省「発注者の責務」の浸透めざす

 改正公共工事品確法、改正公共工事入札契約適正化法(入契法)、改正建設業法のいわゆる「担い手3法」について、国土交通省は本年度を「本格運用元年」に位置付けた。地方自治体などに3法に基づく取り組みを促すため、各種施策の展開を急いでいる。

 担い手3法は、公共工事の品質が将来にわたって確保できるよう「担い手の確保」を主眼に置いた。その柱が改正公共工事品確法で明確化された「発注者の責務」だ。

 具体的には、公共工事を施工する建設業者が「適正な利潤」を確保できるよう、国や地方自治体など公共工事の発注者に予定価格を適正に設定することを求めている。事業の特性や地域特性に応じて入札契約方式を選択できる「多様な入札契約方式」の導入・活用も法律に位置付けた。

 こうした趣旨を踏まえた発注関係事務の共通ルールとなる運用指針は4月に本格スタート。適正な予定価格の設定に向け、最新の積算基準の活用、予定価格を根拠なく引き下げる歩切りの根絶、発注・施工時期の平準化、低入札価格調査や最低制限価格制度の活用を各発注機関に求めている。設計変更などを発注者が適切に実施することも明記した。

 国交省が今、力を入れるのは地方自治体などへの展開だ。国交省は自ら率先して取り組み、範を示すと同時に、都道府県や市町村が参画するブロック単位の地域発注者協議会やその県部会を通じ、全国の発注者に運用指針や社会保険未加入対策などの実行を促している。

 国交省が開いた二つの相談窓口では、発注者からの実務的な問い合わせに応じているほか、運用指針に逆行している自治体の情報を受注者から寄せてもらっている。

 多様な入札契約方式の活用では、各発注者が選択しやすいガイドラインを国交省が整備。自治体を対象にモデル事業を募り、専門家を派遣して実施を支援している。

迫る目標期限、社保未加入対策は正念場

 担い手確保・育成で不可欠なのは建設技能者の処遇改善だ。官民で取り組む社会保険未加入対策はその代表格。建設業の加入率は元請、下請とも上昇しているが、依然として3割以上の建設労働者が未加入の状態だ。「建設業許可業者の加入100%、労働者単位で90%」の目標期限が17年度に迫る中、未加入対策は正念場を迎えている。

 14年10月時点の企業加入率は92・8%と前年同月調査から2・8ポイント上昇。労働者の加入率は5・6ポイント高い67・3%になった。下請次数別で見ると、3次下請以下の上昇が顕著だ。ただ、目標達成には上昇スピードをさらに加速させる必要がある。

 大手や準大手ゼネコンの一部は今春、下請の専門工事業者に対し、社会保険加入の原資となる法定福利費を内訳明示した見積書を提出するよう文書などで指導した。元請のゼネコンに対して見積書に法定福利費を示すよう求める民間デベロッパーも出てきた。下請業者に法定福利費が渡る環境が整いつつある。

 国交省も未加入対策を一段と強化する。この8月から社会保険に未加入の1次下請業者をすべての直轄工事から排除した。さらに、5年ごとの建設業許可更新時に実施している社会保険の加入指導を前倒しし、未加入企業に対し秋に一斉指導を行う。厚生労働省への通報時期も現在より早める。

 こうした施策を周知するため、国交省や厚労省の担当者が全国を回り社会保険への加入を建設業者や行政担当者に直接訴えるキャラバン(地方説明会)も、近畿地区を除き7月までに完了した。訴えが響いたのか、一部会場では説明終了後、参加者から拍手も起きたという。行政主催の説明会で拍手が起きるのはまれだ。

担い手3法本格運用/国交省が歩切り根絶めざす

実態調査実施、未対応は自治体名公表も
 改正公共工事品確法で明記された発注者の責務には、受注者が「適正な利潤」を確保できるよう発注者が適正な予定価格を設定することが盛り込まれた。その第一歩として国交省が力を注ぐのが、歩切りの根絶だ。照準は市町村。昨年9月に歩切りが法律に違反する行為であることが明確となったことを受け、国交省は取り組みを加速している。早ければ年内にも、歩切りをやめない自治体名の公表に踏み切る構えだ。

 歩切りは設計書金額から一定額などを切り下げて予定価格を設定する公共工事発注者の慣習だ。財政の健全化や事務処理の効率化を目的に実施する市町村も多いが、事実上、受注者の利潤を不当に奪う行為とされる。

 政府が14年9月末に閣議決定した入契法に基づく入札契約適正化指針と公共工事品確法で、歩切りは「違法行為」と明確化された。

 国交、総務両省の調査によると、今年1月1日時点で、全自治体の約4割に当たる757団体が歩切りを実施していた。国交省は市町村への働き掛けを強め、6月には再調査を開始。再調査では、歩切り見直しに一向に動かない自治体は年内か本年度内に自治体名を公表するとも通告した。

 さらに国交省は、市町村に歩切り廃止を働き掛けることで全都道府県と7月までに合意した。都道府県の主導による地域内での廃止合意や、個別の呼び掛けなどを行ってもらう。

 歩切りは35年前の1980年から対策が行われてきた根の深い問題だ。歩切り根絶で建設産業行政に歴史的な転換点を刻むことができるか。その答えが明らかになる時期もそう遠くはなさそうだ。
《日刊建設工業新聞》

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