「駆け出しのころ」――佐藤工業代表取締役専務執行役員・宮本雅文氏 画像 「駆け出しのころ」――佐藤工業代表取締役専務執行役員・宮本雅文氏

マネジメント

 入社したのはオイルショックの影響を受ける少し前で、土木、建築、事務を合わせて450人くらいと多くが採用された年でした。東京・水道橋での入社式に出た後、そのまま午後2時ごろの特急電車に乗りました。配属先の富山支店に向かうためです。30人ほどの新人が一緒でした。翌日に入店式が行われ、その数日後にはもう山岳トンネル工事の現場に赴任していました。以来、44歳の時に所長で携わることになったトンネル工事が終わるまで、現場のトンネル屋として歩みました。1年生のころは、現場で測量に明け暮れる日々でした。最初は右も左も分からず、意地のようなもので測量を覚えていきました。最初の現場は湧水がひどく、坑内から出てくると長靴の中にも水が入っているという状態でした。
 私たちが若かったころは、トンネル坑内で作業員たちの仕事の合間に測量を行っていたものです。大切な測量とはいえ、それで仕事が止まれば、彼らにとってはその分だけ作業が遅れてしまいます。ですから、食事やトロッコの入れ替えなどの時間が測量するタイミングでした。その年の11月ごろに導坑が貫通します。貫通が近づいてくると、先輩がわざと「本当に測量は大丈夫か」などと言って焦らされたものです。数日前までは平気でしたが、貫通を翌日に控えた夜は「間違っていたらどうしよう」と考えてしまい、眠れませんでした。でも、私は幸いに1年生で貫通の喜びを味わえたのです。貫通した時は大きな達成感がありますし、全員が真剣に喜びます。たった1回で「これは面白い」とトンネルの世界にはまってしまいました。しかし、この現場ではトンネル工事の怖さも知りました。
 私はよく、「切羽を感じる目」が大切だと言っています。トンネル現場で切羽を毎日見ていると、目に見えるもの以外に何となく感じるものがあります。どんなに新しい技術が出てきても、こうした感性がなくてはいけません。山が悪い時は作業員も緊張しながらやっています。切羽と働いている作業員たち両方の空気を感じれば、事前におかしなことが見えてくると考えています。もしもに備えて資材などを用意すると、事なきを得て要らなくなるものです。ところが、時間がないからなどと用意もせず、無理して進めるとしっぺ返しがきてしまう。山が鳴いている時、立ち止まってこれ以上鳴かさないためにはどうするかを考える。そして実行する。常に意識して対応すれば、それほど山は裏切りません。感性を働かせ、備えてこそのトンネル屋です。
 (みやもと・まさふみ)1974年大阪工業大工学部土木工学科卒、佐藤工業入社。北陸支店土木事業部長、執行役員土木事業本部長、取締役常務執行役員、同専務執行役員を経て、13年代表取締役専務執行役員。15年9月29日付で社長に就任予定。和歌山県出身、63歳。

駆け出しのころ/佐藤工業代表取締役専務執行役員・宮本雅文氏

《日刊建設工業新聞》

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