公共建築の設計者選定、プロポーザル方式拡大……市町村では専門知識不足などが課題 画像 公共建築の設計者選定、プロポーザル方式拡大……市町村では専門知識不足などが課題

インバウンド・地域活性

 公共建築物の設計者選定にプロポーザル方式を導入する地方自治体が増えている。国土交通省と自治体が共同で3年ごとに行っている実態調査によると、都道府県と政令市で13年度にプロポーザル方式を1件以上実施した団体の割合は、前回調査を上回り6割近くに達した。プロポーザル方式は、質の高い建築設計が期待できるとして、国交省もその導入を推奨している。市町村でも実施割合は増えているが、まだ2割未満と低調だ。実態調査は、国交省と都道府県・政令市で組織する全国営繕主管課長会議が11年度(10年度実績)に続いて14年度(13年度実績)に実施した。自治体の設計業務委託の運用状況について情報共有し、設計業務の品質確保に役立ててもらうことを狙いとしている。13年度にプロポーザル方式による設計者選定を1件以上実施したかどうかを聞いたところ、都道府県・政令市は「実施」が59・7%(前回調査51・5%)、「実施していない」が40・3%(48・5%)、市町村では「実施」が18・9%(13・1%)、「実施していない」が81・1%(86・9%)だった。いずれも実施している団体の割合が前回調査を上回り、プロポーザル方式の導入が自治体の間で着実に広がっていることが分かった。
 国交省が、この調査を主管課長会議に移管する前に実施した08年度調査(07年度実績)では、導入割合は都道府県・政令市でも半数に届いていなかった。11年度調査で半数を超え、今回調査でその割合がさらに高まったことになる。一方、市町村の導入割合は、上昇しているとはいえ、依然2割未満にとどまっている。都道府県・政令市を中心にプロポーザル方式が拡大している背景には、設計者の技術力や経験、プロジェクトへの意欲を問うことによる質の高い建築設計への期待があるとみられる。一方、市町村では、専門知識を持つ技術職員が少ないことに加え、「過去に実施した例がない」「手間(人員不足など)」「審査体制が整えられない」などを理由に、プロポーザル方式ではなく、従来型の価格競争入札で設計者を決めるケースが多いことがあらためて浮き彫りになっている。
 国交省ではこれまで、設計業務の発注でプロポーザル方式が拡大するよう、そのメリットを明示し、手続きを解説したパンフレットを作成するなどしてPR活動を展開してきた。各地方整備局に開設している公共建築相談窓口でも、プロポーザル方式の導入に関する自治体からの疑問や質問に答えられる体制を整備。審査体制が整えられないために導入をためらっている市町村に対しては、「整備局の担当者が審査に加わるような対応も考えられる」(官庁営繕部整備課)としている。調査では、プロポーザル方式で何を評価項目にしているかも質問。その結果、都道府県、政令市、市町村ともに「技術提案(取り組み意欲、業務の実施方針、技術提案)」以外に、「事務所の実績」「技術者の資格・経験年数・実績」などとする回答が多く寄せられた。この中で市町村では、都道府県や政令市に比べ、技術提案で具体的な設計図などを要求している割合が高いことも明らかになった。
 国交省はPR用パンフレットで、プロポーザル方式を「設計案をつくっていく上で、発注者との共同作業を進める『パートナー』として、最も敵した設計者を選定するもの」と位置付け、設計案そのものを求める「コンペ方式」との違いを明確に示している。都道府県や政令市が行っているプロポーザル方式による設計者選定では、参加者に技術提案で具体的な設計図などを使用することを禁止しているケースも多い。プロポーザルで設計図が要求されるようになると、受発注者双方の負担が増え、逆にプロポーザル方式の普及にブレーキをかけることにもなりかねない。市町村がプロポーザルとコンペとの違いを認識し、負担の少ない形で提案を評価できるようにすることが、プロポーザル方式の導入拡大にもつながりそうだ。

設計者選定-プロポーザル方式の導入拡大/市町村に支援必要/国交省ら実態調査

《日刊建設工業新聞》

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