福島県・浜通り地域建設業の今……石川建設工業 石川俊社長に聞く
インバウンド・地域活性
--復旧・復興工事への取り組みは。
「震災発生以降、がれき処理から仮復旧、そして現在の復旧・復興工事と、地域の一員として取り組んでいる。われわれには、大きな土木工事をやる能力はないが、その代わり、行政や消防、警察と同じように地域に密着した予備役としての役割がある。それは地震・津波であろうが、原発事故であろうが同じだ」
「受注している工事は海岸堤防の本格復旧が一番多い。これまで経験したことのない大ロットで地元の力だけではできない。復興JV制度を活用して、大手ゼネコンなどにお手伝いいただいており、現在、15JVを組んでいる」
--施工を進める上での原発事故の影響は。
「応援に来てもらっている企業にとって、原発近くに社員を派遣することが大きな負担となっている。本人だけではなく、ご家族の説得、健康診断などに非常に気を使ってもらっており、非常にありがたい。逆に、そうした対応ができない会社は福島に来ることが難しい。視察に来たが、社員を説得できないと断られたケースも随分ある。距離が遠いほど、心理的な壁が高くなると感じている」
「言い方に語弊があるかもしれないが、『福島で復興にかかわる人は国家に貢献している英雄』という証拠がほしいのだ。福島の復興に従事することが、賃金や評価、待遇で有利になるような制度的な仕組みが必要だ。そうでなければ、心のバリアーを克服することは難しい。そうした見返りがなければ、東京五輪のような国家イベントに参画する方が名誉になると考えるのは当然だろう」
--今後の建設業界の見通しは。
「この5年間で、今までの何倍以上かの仕事が出ているが、2年後には半分以下になると考えている。ずっと削減されてきた公共事業の落ち込みを一時的に元に戻したが、この先どうなるかはビジョンを描けない。人を雇うことも難しい」
「担い手3法が施行されたが、長期的に建設産業の技術者を育てるのであれば、大きな仕事でなくて良いから、建設工事をきちんとつないでいくべきだ。われわれは市民と行政が地域にいる限り、予備役として働き続ける。税金で働いている準公務員なのだ。建設業の維持が、社会に必要なコストであることを認識すべきだ」。

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