観光資源として注目される各地の産業遺産、インフラ整備が追い風に 画像 観光資源として注目される各地の産業遺産、インフラ整備が追い風に

インバウンド・地域活性

 日本の近代化や経済成長を支えた産業遺産が、あらためて観光資源として注目されている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された構成資産の一つ「三池炭鉱・三池港」は、新幹線や高速道路の開業・開通が訪問者の足を支える。一方、世界文化遺産への登録を目指す新潟・佐渡の「佐渡金山」は、本土から佐渡へ向かう高速船を新造するなど誘客を強化。各地の産業遺産は夏本番を迎え、一層にぎわいそうだ。 佐渡金山(新潟県佐渡市)/江戸幕府の重要な財源 新潟県と佐渡市は、佐渡金山の世界遺産登録を目指し、取り組みを強化している。その一環として、本土と佐渡島を結ぶフェリーを運航する佐渡汽船は、直江津―小木間を結ぶ高速カーフェリー「あかね」を新造。3月開業した北陸新幹線と連動させる形で、4月から運航を始めた。 ■フェリー新造 本土と佐渡を結ぶカーフェリーは、従来の所要時間が片道2時間30分で、1日に1・5往復の運航が限界だった。観光の活性化や利便性向上には、1日2往復の運航が求められていたものの、従来のカーフェリーでは2往復にするには、2隻のフェリーが必要となる。 佐渡汽船には一つの航路に2隻のカーフェリーを保有する体力がないため、約60億円を投じ、豪州の造船所で、速度の速いカーフェリーを新造。所要時間を1時間40分と1時間以上短縮し、1隻で2往復運航することを可能にした。 佐渡汽船は14年に新潟―佐渡間を結ぶ高速カーフェリー「ときわ丸」も新造しており、観光客の取り込みを図っている。 その佐渡で最大の観光地が、佐渡金山だ。佐渡金山は1601年に金脈が発見され、江戸幕府の重要な財源となった。1896年に三菱に払い下げられ、1952年には鉱石が枯渇し、規模を大幅に縮小。1989年に閉山した。 佐渡金山の鉱脈は東西3000メートル、南北600メートルの範囲に分布し、その中央部に垂直の運搬坑道「大立竪坑」がある。大立竪坑は日立が製造した巻き揚げ機や米国式の空気圧縮機などが導入されており、当時の技術力の高さに驚かされる。 ■大規模な設備 見どころは大立竪坑から大間港までの約3キロメートルの範囲に点在している。品位の低い鉱石を粉砕し、水銀を用いて金を回収する「搗鉱(とうこう)場跡」や、鉱石から金銀を抽出する「青化精錬所・浮遊選鉱場跡」、鉱石の精錬過程で出る泥状の鉱物を洗い、鉱物と水に分離する「シックナー」は、その規模に圧倒される大規模な設備だ。 佐渡金山の閉山後、一部を埋め立てて、ゴルフ場などにしていた時期もあったが、産業遺産としての価値が改めて評価され、保護に転換したという経緯がある。  三池港(福岡県大牟田市)/水圧式閘門、100年…今も現役 三池港(福岡県大牟田市)は、三池炭鉱(同・熊本県荒尾市)に関連した産業革命遺産の一つ。1908年に三井鉱山のプライベートポートとして開港した。それ以前は、石炭を大牟田川から小型船で、長崎県の口乃津港や熊本県の三角西港に移送し、大型船に積み替えて海外へ輸出していた。 ■最盛期は月数百隻  三池炭鉱の最盛期には、月数百隻の大型船が石炭を積み出していた。エネルギーが石炭から石油にシフトし、石炭の需要が低下すると、それに伴い石炭の生産量も減少。石炭の積み出しは1989年を最後になくなり97年には三池炭鉱が閉山した。97年には月200隻が寄港し、荷物の積み降ろしをしていたが今は材木や化学品など月80隻程度が寄港するのみになっている。 三池港は遠浅の人工港湾で、閘(こう)門を境に潮位が変わる。水位調整のための水圧式閘門と蒸気式クレーンが最大の特徴であり、戦艦「敷島」を建造した英テムズ・シビル・エンジニアリングが製造したものを輸入し、100年以上、保守を続けながら、使用している。これが世界遺産登録の要因にもなった。 水圧式閘門はタンクに水をため、その水圧で閘門を開けるもので8・5メートルの水深を常に維持する。製造から100年以上経過し、メーカーも既になくなっているため、保守などで必要となる部品は、製造時の図面から複製している。三池港物流の伊木田政宏機関長は、「年に1回くらいのペースで、部品を複製している」と話す。 ■世界遺産、観光客増 三池港の機械室などは非公開だが、周辺には三池炭鉱の竪坑である宮原坑や万田坑、専用鉄道敷跡など、構成資産がある。世界遺産登録で、今後は観光客が増えることが予想されている。12年には有明海沿岸道路の三池港インターチェンジ(IC)―大牟田IC間が開通するなど、福岡県や大牟田市などは三池港の物流拠点としての利便性を高めるため、交通インフラの整備を進めてきた。今後は観光客のアクセスを向上させる交通ネットワークの整備などが求められている。 17年には有明海沿岸道路の三池港IC―大川東IC間が開業予定で、世界遺産の「三重津海軍所跡」(佐賀市)とのアクセスがこれまでの1時間から約半分に短縮される。大牟田市世界遺産登録・文化財室の坂井義哉さんは「有明海沿岸道路を世界遺産道路としてアピールしたい」と話す。

夏休みに産業の歴史学ぶ旅はいかが?―産業遺産、インフラ整備追い風

《ニュースイッチ by 日刊工業新聞》

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