マルチテナント型物流施設の市場拡大……建設コストが課題 画像 マルチテナント型物流施設の市場拡大……建設コストが課題

制度・ビジネスチャンス

 ◇建設コスト上昇への対応課題
 多層階で延べ床面積が数万~10万平方メートルを超えるマルチテナント型物流施設(LMT)。ランプウエーやスロープを設けてトラックが上層階に直接乗り入れ、各階には広い車路と高床式のトラックバースを備える。一度に数十台のトラックが同時に積み降ろし作業ができ、フロア単位・区画ごとの複数テナントへの賃貸も容易だ。こうしたLMTの標準仕様に加え、近年は免震構造や非常用発電機といったBCP(事業継続計画)対応、太陽光発電やLED照明、緑化などの環境対策にも力を入れ、施設をハイスペック化する傾向が一段と強まっている。環境対応や省エネ性能などの評価・認証を積極的に取得し、リーシングに役立てる動きも活発だ。物流拠点の適地には当然、多くのテナント企業が進出を希望する。デベロッパー各社も同じエリアにLMTを開発しようと考えるため、必然的に競争も激しくなる。その結果進んだのが、他社施設との差別化を図るための「ハイスペックの標準化」だ。
 プロロジスの山田御酒社長は「ハイスペック化の取り組みは、ハード面ではもう限界に来ている。今後はソフトを中心に施設の付加価値をいかに高めるかを考える必要がある」と指摘する。施設のハイスペック化は一気に進んだが、テナントがまず重視する項目が賃料なのは昔も今も変わらない。オリックス不動産事業本部の久保田勲物流事業部長は「適正賃料でテナントに供給することが重要で、何でもフルスペックの施設である必要はない」と強調する。施設のハイスペック化は、建設コストの大幅な上昇ももたらした。労務単価や資機材費の高騰なども影響し、多くの物流施設デベロッパーのトップが「ここ数年で2~3割ほど建築費が上がった」と口をそろえる。コスト高への対応策も出てきた。三井不動産ロジスティクス本部の三木孝行執行役員本部長は「土地の取得段階など、できるだけ事業の川上で施工会社を決める。信頼できるゼネコンに前倒しで発注し、急激なコスト上昇へのリスクヘッジに取り組んでいる」と説明する。ハイスペック化については、「先進的物流施設として多様なメニューを用意しながら、よりグレードの高いものを造る」とニーズに応じて各種設備を付加する考えを示す。
 野村不動産都市開発事業本部の山田譲二物流施設事業部長は「50年間使用できる施設づくりにこだわる。長期的にテナントの入れ替えを想定しており、施設の基本スペックを下げることは考えていない」と話す。建設コスト上昇の勢いは落ち着いたが、高止まりの状況が続く。最近の主要顧客であるEコマース(電子商取引)企業はコスト意識が強く、建設コストの上昇分を賃料に転嫁するのが一般のオフィスビルなどに比べて難しい。レッドウッド・グループのスチュアート・ギブソンCEO(最高経営責任者)はコスト管理の方法について、「施工者のゼネコンと長年にわたって信頼関係を築いてきた。施設規模に合わせて大手と中堅のゼネコンを使い分けながら、インハウスの設計チームを中心に価格交渉を円滑に進めている」と話す。ハイグレードの施設づくりとコスト抑制にどう折り合いを付けていくか。開発事業のパートナーとしてのゼネコンへの期待も小さくない。

拡大市場-物流デベロッパーの戦略・中/標準化するハイスペック施設

《日刊建設工業新聞》

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