【地方発ヒット商品の裏側】町工場の技術が生んだ「魔法のフライパン」 画像 【地方発ヒット商品の裏側】町工場の技術が生んだ「魔法のフライパン」

インバウンド・地域活性

 三重県の町工場が生み出した鉄鋳物の「魔法のフライパン」が人気だ。価格は8000円(外径24cm)~1万2000円(同28cm)。フライパンとしては高いにもかかわらず、現在30か月待ちと、注文が殺到している。これほどヒットしている理由を、仕掛け人である錦見鋳造株式会社の錦見泰郎社長に聞いた。

■3倍難しいことをやれるかどうか
 錦見氏が魔法のフライパンづくりの第一歩を踏み出したのは1992年のこと。錦見鋳造は錦見氏の父親が経営する小さな鋳物屋だった。当時職人は5人で、錦見氏は専務兼職人として、メーカーから仕事をもらって会社を回していた。自動車のエギゾーストマニホールドなどの部品を当時は主に作っていた。

 バブルが崩壊した当時、メーカーからの要求は厳しくなる一方だった。「値下げをしてくれ。嫌ならやめてもいい。代わりならいくらでもいる」。何度となくそんな言葉を浴びせられたという。

 そんなころ、ある新聞記事が目にとまった。”どんな業界でも生き抜くためには、価格競争ならば他社より3分の1安くするか、技術競争ならば他社より3倍難しいことをやれるかどうか”。「これだ! と思いました。価格競争はキリがない。それならうちは他社よりも3倍難しいことをしよう、と」。このときから錦見氏の自社製品づくりがはじまった。


■重さという「弱点」を克服
 これまで培ってきた技術を活かせる鉄鋳物の製品で、かつ、多くの人に使ってもらえるものを自社製品にしよう。そこで、食事に関係するものがいいと考えた。鉄鋳物でフライパンを作ってみようと気がついたのだ。

 鉄鋳物には一般的な鉄には含まれない炭素が含まれる。製造過程で、鉄と炭素の境界(すきま)。この穴に油を馴染ませることで、焦げ付きにくいフライパンが作れる。また遠赤外線効果によって、素材の中までしっかりと火が通る。テフロンなどのコーティング加工が施されたアルミ製フライパンは軽いが、焦げ付きにくくするコーティングの寿命はおよそ1年と短く、頻繁に買い替えが必要になる。その点、鉄鋳物のフライパンは長持ちだ。
《DAYS》

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