宮城県NPO「匠の右腕」地域に根ざす大工育成……手刻み加工の技術伝承 画像 宮城県NPO「匠の右腕」地域に根ざす大工育成……手刻み加工の技術伝承

インバウンド・地域活性

 地元の大工職人が地元の木材を使って地元の住宅を建てて修繕していく『完全地産地消』を目指したい-。そうした理念を掲げて、宮城県内などで人材育成に取り組むNPO法人「匠(たくみ)の右腕」。東日本大震災の翌年(12年)9月に発足し、大工の技能講習や就職セミナーなどを展開中だ。どのような狙いがあるのか、理事長を務める栗駒建業(仙台市泉区)の高橋渉代表取締役に聞いた。高橋氏は、本年度から日本コンピュータ学園東北電子専門学校(仙台市青葉区)の建築大工技能科で、実物大の木造住宅モデルを建築する授業を行っている。同校では今年4月、宮城県岩沼市内に一戸建て住宅が丸ごと入る全天候型実習棟を新設。18歳の学生6人が木造軸組構法を学んでいる。
 取材日には屋根部分の部材を地上で仮組みする作業を行っていた。必要な材料を拾い、継ぎ手部分のほぞやほぞ穴を手刻みで加工し、組み立てていく。地道で繊細な手仕事が求められる。学生たちは、かんなでほぞ穴の調整などを行いながら、柱や梁を組み立てていた。高橋氏は「一般の住宅づくりの現場で即戦力となるよう、大工の実技だけではなく、窓枠入れなどまで教えたい」と話す。高橋氏の活動のきっかけは東日本大震災だった。震災直後、資材も移動手段もままならない中で、住宅の修繕に奔走した。被災した建物を復旧する際は、現場合わせで壊れた柱などを補強していかなければならないが、木造住宅の新築工事は機械加工の部材を現地で組み立てる施工法が主流なので、手刻みの技術を持つ大工職人が少なく、仕事が追いつかなかった。高橋氏は「新築よりも改修や修繕の方が技術が求められる。手刻み加工ができる大工職人を育てなければ、次の災害時に自分たちで地域を守ることができなくなる」と痛感したという。
 震災時は団塊の世代がなんとか働くことができたので対応が可能だった。だが団塊の世代は、あと5年もすると引退する。「今のうちに技術を伝承しなければならない」という危機感が高橋氏を突き動かした。人材育成の面で目指す姿は、昔ながらの棟梁(とうりょう)だ。棟梁は工事はもちろんのこと、マネジメントや技術指導、さらには独立支援まで総合的に面倒を見ていた。全体を見渡す人材が必要との認識だ。同NPOでは、国土交通省の助成金を活用した大工実技指導や、専門学校・工業高校での指導などに取り組んできた。将来の目標は、現場を引退した熟練大工が若手を指導しながら、県産木材の手刻み加工を行う製材工場「職人の里(仮称)」を立ち上げることだ。修行の一環と位置付けることで加工コストを抑えつつ、実務を通じて技術を伝承する。こうした枠組みを軌道に乗せて、他地域に広げていきたいと考えている。NPO設立を後押ししたのは、深松組(仙台市青葉区)の深松努社長から聞いた「職人育成は国防」という言葉だったという。理事として参画している深松氏は「熟練大工の裾野を全国で広げていかなければ、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起きた時に対応できなくなる。東日本大震災で苦労した東北から、先手を打ちたい。それが国民の将来のためになる」と話している。

NPO匠の右腕(宮城県)/地域に根ざす大工育成/手刻み加工の技術伝承

《日刊建設工業新聞》

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