東北の現場から/防災集団移転促進事業統括マネジ業務(宮城県気仙沼市) 画像 東北の現場から/防災集団移転促進事業統括マネジ業務(宮城県気仙沼市)

インバウンド・地域活性

 東北地方では東日本大震災で被災した住まいの復興へ向けて工事が着々と進んでいる。多数の事業が交錯する状況下で、滞りなくそれぞれの事業を進めていくのは容易なことではない。複雑に絡み合いながら同時進行する復興事業を先導する行政機関には多岐にわたる能力が求められる。そうした行政のサポート役として事業推進の一翼を担っているのが建設コンサルタントだ。宮城県気仙沼市が進める防災集団移転促進事業(防集事業)の統括マネジメント業務を担当しているパシフィックコンサルタンツにその役割と業務の実際を取材した。

 同市の防集事業は、全体の整備戸数が966戸(今年3月末時点)にのぼり、協議会方式で37地区、市誘導型で9地区の基盤整備が進められている。工事は全体を3期に分けて発注。1期、2期分は工事着手率が100%で、3期分も94%で着手済み。引き渡しが完了した地区では、新たな住宅での生活も始まっている。

 事業のコントロールは本来行政の役目だが、限られた人員では対応が難しい。このため同市は全体を見渡しつつ行政をサポートする統括マネジメント業務を同社に委託した。事業計画の立案や他の復興工事などとの事業間調整、地元説明、開発許可や完了検査といった各種手続き、関係協議会の運営など業務内容は幅広い。

 工事発注に際し枠組みを決める段階から参画する同社気仙沼事務所の石井良雄所長は、「前提条件が変わることが多いが、引き渡し時期が公表されている。いかに関連事項を調整して期限に遅れることなく、かつ期間を縮めて目的物を造るかが勝負」と話す。

 防集事業の造成工事には土のやりとりが不可欠だが、搬出先は土地区画整理事業や河川事業など多分野に及び、事業主体が異なることも多い。トータルで搬出・搬入量のつじつまが合っていたとしても、搬入先の作業が遅れた場合、別の搬入先を手当てしなければ造成工事はストップしてしまう。

 発注者の異なる事業も含め、全体を見渡しておかなければ調整できない。「復興事業全体が遅れることを防ぐため、関係者に粘り強く理解を求めながら事業の最適化を図っている」(石井氏)。

 例えば小々汐地区では、より住みやすくするために駐車スペースの確保が必要と考え、住民間の協議で各戸が前面道路から1メートルずつセットバックすることを決めた。そうなると図面も当然変わり、開発許可の変更が必要となる。

 被災地では労務・資材がひっ迫しており、先手を打って調達する必要があるため、見定めたタイミングで工事を実施できるよう段取りを整えていくことも重要な仕事だ。

 復興事業に対する住民の理解促進の役割も担っている。行政や設計コンサルタント、施工業者などそれぞれの立場で説明を行っているが、全体を通して話していかなければ、高齢の被災者などは理解が難しい。「支援制度も含めて、イメージしにくい部分を理解してもらえるよう資料づくりなどのサポートもさせていただいている」(石井氏)という。

 こうした統括マネジメント業務の成果は、なかなか定量的に見えにくい側面もある。だが、あまりにも事業の数が多い状況では「行政内で、誰一人として全体をまたいで仕事をしていない」(市建設部防災集団移転促進課)。

 平時のように設計などが固まってから工事へと移るのであれば問題はないが、一日も早い完成が求められる復興事業では、すべてを同時並行的に進めざるを得ない。人事異動や派遣職員の交代が繰り返される中で、経験とノウハウを持つコンサルタントが一貫して従事する意義は大きい。

 同市の担当者は「被災地では、発注したものの実際に動いていない工事も少なくない。事業が止まらずに動き続けていることが(統括マネジメント業務の)一番の成果」だという。
《日刊建設工業新聞》

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