中小企業のクラウド・フリーソフト活用講座(1) 画像 中小企業のクラウド・フリーソフト活用講座(1)

マネジメント

●小規模企業にこそ求められる業務効率化

 経営や管理にさける資源に限りがある小規模企業にとって、業務の効率化は大きな命題です。企業に求められる経営、管理業務は、規模の大小に関わらず、行わなければならないものも多く、大規模企業にとっては、それほど負荷に感じない業務も、小規模企業にとっては、大きな負担となりがちです。

 とくに、個人事業者や家族など少人数で運営している企業では、資源を管理業務に割くという事は、そのまま営業資源の減少につながり、業績を低下させることにつながりかねません。そうした事態をさけるためにも、小さな企業ほど業務の効率化を進めていかなくてはなりません。

●低コストに業務を効率化することが可能な時代

 管理業務の効率化には、業務ソフトの導入により、手作業を機械化することが効果的なのですが、つい最近まで、ことはそれほど簡単ではありませんでした。業務ソフトは、個人向けのソフトのように大量に売れるものではないこともあって、比較的高価で小規模企業にとっておいそれと導入できるものではありませんでした。会計ソフトや給与計算ソフトといった基本的なものでも、安いもので数万円、高いものは100万円ほどもしたのです。

 しかも、こうしたソフトは、オフィスに設置したパソコンにインストールして使用するもので、パソコンの故障やウィルス感染などからデータを保全する対策や法改正に対応したソフトのバージョンアップ対応など、ソフトの購入費用以外にも種々の配慮とコストが必要なものでした。作業はオフィスのパソコンで行うしかなく、外出中の空き時間に細かい処理を進めるといったことも出来ませんでした。

 ところが、昨今のクラウドコンピューティングの進展により、様相は一変しました。クラウドベースで、無料ないしは低価格で業務ソフトを提供するサービスがいくつも現れてきたのです。こうしたサービス(クラウド業務ソフト)を利用することで、極めて低コストで業務の効率化を進めていくことができる時代となりました。Windowsパソコン以外にも、Macやタブレット、スマートフォンなどに対応しているものも多く、いつでも、どこでも業務ソフトを利用することができます。

●クラウド業務ソフトは低価格。無料のものも

 クラウド業務ソフトの利用料は、総じて低価格です。パッケージの製造コストや物流コスト、販売店のマージンが不要なこと、ソフトを実行したりデータを保存するサーバーなどインフラコストが大きく低下したこと、サポートをメールやチャットなど、ネットを利用したものに絞り込み、効率化していることなどで、その低価格は実現されています。

 「円簿会計」や「円簿営業支援」のように無料で利用できるものもあります。もちろん、ボランティアでソフトが提供されているわけでありません。ソフトの利用時に広告が表示され、その収益で、機能制限や期間制限、追加的な料金支払いのない、完全無料を実現しています。

 無料版と有料版が用意されていて、無料版では機能の一部が制限されるソフトもあります。こうしたソフトでも、必要な機能が利用できるのであればいいのですが、中には、無料で利用できる期間が極めて短かったり、入力できるデータ量が非常に少なく設定されていたりして、いわば体験版的なものに留まるソフトもあるので注意が必要です。こうしたソフトでは実際に業務に使用する際には、料金の支払いが必要になる場合がほとんどです。

●クラウド化で何が変わったか

 クラウド化によって変わったことは大きく3つあります。

 1つめは、ソフトを入手する必要はなく、そのため法改正などによってソフトのバージョンアップが必要になった場合でも、意識することなく最新のバージョンが使えるということです。パッケージソフトでは、バージョンアップの際には追加費用が必要だったり、有償のメンテナンス契約を締結する必要があったりしましたが、クラウドでは通常こうした費用は不要です。

 2つめは、データがクラウド上に保存されるので、データの破壊、消失などの心配をする必要がないということです。自分のパソコンにデータが保管されるソフトでは、パソコンのハードディスクが壊れたり、ノートパソコンを持ちだして紛失した場合などは、それまで入力してきたデータは全て失われてしまいます。そうした事態に備えて、バックアップを行うなど、面倒な作業が必要でした。たとえ、バックアップを常に行っていても、火事などの災害で、オフィスに保管しておいたバックアップデータも含め焼失してしまうということも起こりえます。

 クラウドでは、クラウド上で自動的にバックアップされている業者が多く、万一サーバーが故障するなどの事態に陥っても、データは保全されます。サーバーは、災害に備えた十分な対策が講じられており、一般のオフィスに比べて罹災のリスクはかなり低くなっています。さらに、サービスによっては、東京、大阪間など物理的に離れた場所でバックアップを行うことで、大規模災害などの際に、たとえデータセンターが罹災した場合にも、データが失われることのないようも徹底的にデータ保全をはかったものもあります。

 3つめは、モバイルネットワークの進展により、いろいろな場所で様々な機器で利用することができることです。パッケージソフトでは、そのソフトをインストールしたパソコンでしか業務を行うことが出来ません。ところが、クラウドソフトではソフトとデータはクラウド上にありますので、クラウドに接続できるネットワーク環境とアクセスするためのソフトがあれば、使用することが出来ます。アクセスするソフトというと特別なソフトが必要に思われるかもしれませんが、通常はホームページなどを閲覧する際に使用するブラウザーを用いますので、ホームページを見ることができる環境なら、業務ソフトを使用することができるのです。

 しかも、パソコンに限らず、タブレットやスマホからでも使用することができます。パッケージソフトの大半が、タブレットはおろか、パソコンの一種であるマックで利用できないことと対照的です。

 こうした特性を活用すれば、営業中の合間の細切れ時間に、タブレットやスマホから、経費精算処理を行ったり、得意先と商談中に注文を聞きながら見積書を作成したり。これまでとはレベルの違う業務効率化が図れることでしょう。

 デメリットももちろんあります。最大のものは、ネットワーク環境がないと使えないということでしょう。クラウド上にソフトやデータがあるのですから、クラウドにアクセスできなければ、使用することができません。また、たとえネットワーク環境があっても、その速度が遅いとソフトの動作速度も劣化してしまいます。

 最近は、高速のモバイルネットワークが日本全国で使えますし、Wi-Fiスポットも多いので、あまり困る場合はないのですが、ビルの地下など利用できない場所もあるので注意が必要です。

●フリー業務ソフトにはどのようなものあるか

 クラウド業務ソフトは、現在どんどんその種類が増えています。そのすべてをご紹介するのは難しいので、無料で利用できる主なソフトの一覧表を作成しました。

 会計、給与、請求書、営業支援と小規模企業で使用頻度の高い業務ソフトが無料で使えます。こうしたソフトを活用することで、最小限のコストで業務の効率化が図れることでしょう。

・フリーソフトのリスク

 小規模企業にとってありがたいフリーソフトですが、フリーであるがゆえのリスクもあります。その最大のものは、サービスがいつまで提供されているかということでしょう。こうしたソフトを提供している企業は、歴史の浅いベンチャー企業が多く、パッケージソフトを販売している大手企業に比べると脆弱であることは否めません。そのため、サービスが停止されてしまう可能性もゼロではありません。また、サービスの提供形態が変わって、高額な利用料が必要になることも考えられます。

 こうしたリスクを考慮すると、他のソフトへのデータ移行が可能であるかどうかは、大きなチェックポイントになってくるでしょう。データ移行が可能なら、たとえサービスが停止してしまっても、それまで入力してきたデータを他のサービスやソフトに移して業務を継続することができます。

・選択のポイント

 最後に、フリー業務ソフトの選択のポイントをまとめておきます。まず最初のポイントは、本当に無料で使えるのか、ということです。「無料」をうたっていても、利用期間や入力データ量に上限があるソフトでは、やはり問題があります。こうしたソフトは、無料ソフトとうたってはいるものの、どちらかと言えば体験版と割りきって利用する必要があるでしょう。

 機能面では、どのようなソフトでも、最低限必要な機能は備わっています。例えば、会計ソフトで会計処理に不足があるということはまずありません。ただ、付加的な機能については、いろいろ違いがあるので、本格的に利用を始める前に、十分に確認することが必要です。一例を上げると、個別のサービスとして提供されている請求書を発行する機能は、「Freee」や「円簿営業支援」にも備わっています。これらのソフトを利用するユーザーは、わざわざ請求書ソフトを導入する必要はないかもしれません。

 操作性も大きな違いが出てくる分野です。シンプルでわかりやすいものを好まれる方もいるでしょうし、さまざまな入力支援機能や特徴的な操作方法を好まれる方もいるでしょう。慣れの問題もあるのですが、やはりしっくり来るものを選んだほうが、作業効率は高くなります。タブレットやスマートフォンでの利用も考えている方は、それらの機器での使い勝手も確認しておいたほうがいいでしょう。

 最後に、なんといっても重要なのが、セキュリティです。データをやりとりする経路が暗号化されているか、入力したデータはきちんと保全されているのか、そして、いざという場合には、他のサービスにデータを移行できるのか。こうしたポイントをチェックしてみてください。

 次回は、会計ソフトにスポットをあてて、解説します。


筆者:松山俊一
日経BP社記者を経て、現在ミール研究所中小企業診断士。雑誌「日経パソコン」で業務ソフトの評価ページを担当し、数多くの業務ソフト評価に携わる。現在は企業のビジネスプラン作成支援、人材育成支援などを手がけている。

【業務系フリーソフト講座】第1回 数あるクラウドフリー業務ソフトの特徴と選択のポイント

《松山俊一》

編集部おすすめの記事

特集

マネジメント アクセスランキング

  1. 人事担当者は必見! 来年度の就活学生の傾向は○○重視!?

    人事担当者は必見! 来年度の就活学生の傾向は○○重視!?

  2. 大成建設、都内で女子中高生ターゲットに見学会

    大成建設、都内で女子中高生ターゲットに見学会

  3. インバウンド対策、ツールでも――中国語・韓国語にも対応の極小LED文字盤がキャンペーン

    インバウンド対策、ツールでも――中国語・韓国語にも対応の極小LED文字盤がキャンペーン

  4. コマツ、日本トイレ大賞大臣賞受賞!

  5. 【本音で訊く! マイナンバーの深層&真相&新相(4)】番号制度の誤解と本質的な狙い

  6. 本日の新聞から:毎日経済人賞はスバル社長とモンベル会長

  7. 社員のアイデアで物流現場を改善! 佐川ロジが社内大会を初開催

  8. 労働者1人あたりの生産量、2014年度は5年ぶり下落

  9. 建設技術研究所が民事再生の日総建支援…都市計画部門強化へ

アクセスランキングをもっと見る

page top