20年続く福岡発のゲームデベロッパー、見ているのは世界市場――サイバーコネクトツー 画像 20年続く福岡発のゲームデベロッパー、見ているのは世界市場――サイバーコネクトツー

マネジメント

ゲーム・IT・CGスタジオなどの地方分散が進む昨今。札幌、名古屋、沖縄などで産業クラスター化が進行中です。その先鞭をつけたのが福岡市で、サイバーコネクトツーはレベルファイブ、ガンバリオンと共に「御三家」と言われる企業。

しかし、そこには企業としてすさまじい努力があるのは言うまでもありません。OGC2015で松山洋氏は「福岡から世界へ!ゲームデベロッパーがワールドワイドで20年勝ち続けるための方程式」と題して「相手を知れ!」「中から変えろ!」「勝つための環境づくり!」という戦略を明かしました。



相手を知れ

ここでの相手とはクライアント先であるパブリッシャーと、海外の現地ユーザーという2つの意味合いがあります。まずパブリッシャーとは一社につき年52回の週次ミーティングと、100回以上におよぶ会食を実施。さまざまな立場の人と、さまざまな形で話をして、その意向を注視するとのこと。一方で海外ユーザーに対しては年10回におよぶ海外視察を実施し、日中はびっちりとプレゼンテーションやインタビューなどの仕事を入れ、夜は必ず現地の人と会食を実施。メッセージフォームを通してユーザーからの生の声も集めて(日・英・仏・中)、常に開発と宣伝に反映させているそうです。

松山氏はよく「『ナルト』のゲームだから売れる」などと言われるが、過去15年間でさまざまな企業がナルト原作のゲームを作ってきた中で、うちだけが生き残っている。それは経験から導き出した確固たる戦略ゆえ」だと指摘します。そこでのポイントは「どうすれば売れるかではなく、どうすれば嫌われないか」を考えぬくこと。「海外ユーザーに媚を売るのではなく、日本人ならではのクリエイティビティに自身を持った上で、不必要なマイナス要素を取り除くことが重要」で、下記4点の経験則を説明しました。

(1)やる気の感じられないトロフィー・実績は嫌われる
「はじめてゲームオーバーになった」「全キャラを開放した」「**を20回行った」などではなく、「ナイフのみでクリアする」など、プレイヤーが正しく燃えられる内容にすること。海外ユーザーはトロフィーの内容を理解してから購入することが多いそうです。『ナルティメットストーム2』の発売後、ユーザーからのフィードバックを通して反省したと語りました。

(2)海外ユーザーも「ドラマ」を求めている
俗に海外ではストーリーではなくバトルの面白さが重視されるなどど言われますが、実際は「見ているだけのストーリーや、プレイができない時間が嫌いなだけで、ドラマ性やストーリー性は不可欠」なのだそうです。『ナルティメットストーム1』でストーリーを割愛し、すぐに遊べるようにしたところ、多くのユーザーから落胆の声が届いたとのこと。そこからゲームプレイとドラマ性の融合が課題となったと言います。

(3)「なんでもかんでも難易度高め」は間違い
「難しいことと理不尽なことは別」(松山氏)とのこと。『ダークソウル』や『ブラッドボーン』をお手本に社内勉強会が開かれているそうです。

(4)クオリティの低いPR動画は逆効果
今でも紙媒体から情報を得ることが多い日本と異なり、ネット中心で情報を得ている海外ユーザー。特に良質なトレーラーを見て妄想が掻き立てられているそうです。「発売日に向けて第一弾、第二弾とトレーラーが公開されていき、一喜一憂しながら発売日を待っています。そうした中で中途半端なプレー動画を出すと逆効果になってしまいます」(松山氏)

中から変えろ

これらを実現するために、松山氏は「中から変えろ」と題して同社で進められている「超行動」プロジェクトを説明しました。これは平たく言えば「ふだんの開発業務とは異なる評価軸を社内に持ち込むことで、社員のモチベーションをアップさせ、開発効率のアップや業務改善につなげる」取り組みのことです。

具体的には(1)超企画(毎月企画コンペを実施。年間36本の企画が集まり、その中から4本が開発進行中)(2)超ほめる(スタッフ同士で頑張っている人物を褒める。1人につき3票まで投票でき、ボーナスの査定に影響する)(3)超日報(作業日報にコメント欄を作り、第三者が見て知見が得られる情報の共有を義務づける。社員の全日報が互いに見られるようにして、投票で表彰する)(4)超ゲームジャム(GWなどに社内有志でゲームジャムを実施)(5)超アートグランプリ(全社員を対象としたアートグランプリで、同社オリジナルの書籍で掲載)(6)超ライブラリ委員会(社内のマンガやDVDなどでオススメを共有しあう)などです。

勝つための環境づくり!

最後にあげられた「勝つための環境づくり」では、福岡市の高いクオリティ・オブ・ライフについて説明がありました。松山氏は「1日24時間は誰にとっても平等で、通勤時間が30分以内と短いだけで福岡は東京より優れている」と指摘。一方で情報の少なさについては、東京スタジオで積極的に同業者との交流会やラウンドテーブルなどを実施し、テレビ会議システムで情報を共有しているといいます。「こうした勉強会は年間10回以上やっています。昨今ではスマホ系企業とのつながりもかなり密になってきました」(松山氏)

最後に松山氏は「家庭用ゲームが売れなくなってきたのは事実だし、ソーシャルも売れるものと売れないものの二極化が進んでいるが、ゲーム業界はいつの時代も厳しい」と指摘。不景気になって偽物のエンターテイナーが脱落しただけで、自分たちとしてはユーザーに最初から選ばえる1本を作り続けるしかないと語りました。その上で漫画『東京トイボックス』に記された「まずは夢と希望/次は努力と根性/最後に必要なことはふんばり」というセリフを引用し、これからも福岡から世界に挑戦し続けていくと締めくくりました。

サイバーコネクトツー松山洋社長が明かす、デベロッパーが20年勝ち続けるための方程式

《小野憲史》

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