「おとりよせ」ブームの先駆け、メディア機能に徹したサービスで成功――アイランド 画像 「おとりよせ」ブームの先駆け、メディア機能に徹したサービスで成功――アイランド

制度・ビジネスチャンス

■不況で贅沢の価値観が変わった

 「濃茶ロールケーキ(ロングサイズ)」(1,890円)、「館ヶ森高原豚骨付きロースセット」(3,150円)、「会津高原辛し味噌 蛮」(462円)……。スイーツから調味料、お酒まで、アイランドの運営する「おとりよせネット」は、一度は取り寄せたくなるような商品をカテゴリごとに掲載している。2003年にスタートした、女性をターゲットとしたお取り寄せの口コミポータルだ。

 “お取り寄せ”という言葉は、どこか憧れに近い響きがあり、ちょっぴり特別で贅沢なイメージが浮かぶ。しかし、代表取締役社長の粟飯原理咲(あいはら りさ)氏によると、同サイトの利用者の32%が1週間に1回以上の頻度でお取り寄せを楽しんでいるという。利用者属性は30~40代の女性が7割。そのうち65%が既婚者で、一人当たりの単価は3,000~5,000円だ。利用目的は1位が「普段使い」、2位が「自分へのご褒美として」、3位が「特別な日」のために、といった具合。ユーザーの行動からは、無駄なく賢く食材を買いたいが、「オリーブオイルにはこだわりたい」「塩だけはこだわりたい」といった1点豪華主義に似たこだわりの姿が見えてくる。粟飯原氏は、このようなユーザーの行動には不況が関係していると分析する。「今までだと、ボーナスが入ってちょっとリッチになったりするとブランドものを買っていた女子が、ブランドものを買えなくなった。高級スイーツなら、3,000円で結構なものが買えます。しかも3~5万円のブランドを買うよりも、お手頃ですごく華やいだ気分になれます」。

 そもそも、“お取り寄せ”は作家や芸能人など一部の人が実践する憧れのライフスタイルだった。一般人には広まっておらず、粟飯原氏が「おとりよせネット」を立ち上げた時には、「お取り寄せって何のこと?」という声も多かった。それが、一般に広まったのは2005年。電通がトレンドキーワードとして発表したころだ。

■掲載する商品はすべて審査する

 同サイトに商品を載せたいというショップは、まず編集部の一次審査を通過する必要がある。それが通ると、5名の“おとりよせ審査委員”が試食を行い、サイトに評価を載せる。以前は、5人のうち3人が“おいしい”と判断しないと商品を掲載していなかったが、現在は1次審査が通ったものは全て掲載している。そのかわり、9月からは“まずい”という意見も含め全ての評価を掲載しているという。

 現在“お取り寄せ審査委員”は約8,000人おり、ショップからの商品エントリーがあると編集部が募集をかける。商品を掲載しようと思うショップには、審査料4万円と掲載料2万円がかかる(8月末から初回は無料としている)。審査に1回通ると、サイトの広告にも申し込むことができるという。

 一見強気の姿勢に見えるこの手法だが、すごく手間がかかる。評価をなかなか書かない審査員には、「感想をお待ちしています」とメールや電話でコミュニケーションをとる。当初は掲載したいショップに対してラブコールも送り続けた。「商品を載せる時には実際に試食をし、美味しいものを掲載することが必要」……このこだわりが、手間のかかるやり方を続けている理由だ。そうすることで本当に商品や味に自信のあるショップがエントリーする効果もある。例えば、自社のプリンを掲載したいというある会社は、プリンを食べ続けている審査員を逆指名してくることもあるという。

「(立ち上げようとした時)このやり方は絶対に成り立たない、と言われました。ショップがモノもお金も出して、ユーザーが試食し、5人中4人がまずいと言ったから掲載しないなんて、訴えられるよ。とまで言われました」「しかし、実際はじめてみると反響があり、かなりのショップさんが申し込んでくれました」。オープン1年間は広告をとらなくてもやっていけるくらいだったという。

■メディアに徹するということ

「飽くまでもメディアに徹しようと思いました。売上げを伸ばそうと思うなら、自分たちで商品を販売したほうがいい。メディアがやりたいという明確な思いがない限り、この業態をやることはないでしょう」(粟飯原氏)。

 実は「おとりよせネット」は、サイトで商品を1品も販売していないのだ。そこでは商品の評価をしているだけで、ユーザーはショップの独自ドメイン(一部楽天などショッピングポータルを含む)へ誘導され、そこで購入する形となっている。

 オンラインショッピングでは楽天に店舗を持つショップもあるが、ほとんどが独自ドメインに送客できる手段を持っていない。また、ショップのなかには楽天だけに頼りたくないという思いもあるという。ここが、同社が狙うビジネス市場の穴かもしれない。また、「おとりよせネット」を訪問するユーザーは目的がはっきりしているためCPA(Cost Per Acquisition)が高い、という点も強みだ。楽天への送客だけを見ても、昨年比で200%の伸びとなっているという。

 もともと粟飯原氏は理系の出ではない。文系出身でパソコンを触ったこともないままNTTコミュニケーションズの先端ビジネス開発センタに配属になった。「当時は電子マネーがすごく流行っていて、スマートキャッシュとかXMLとかの実証実験を行っており、私自身もオンラインショッピングシステムのマーケをやっていました」。その後リクルートに移り、新規事業を考える部署で1年間企画の仕事に就いた。考えた企画は時期尚早と判断され、サービスインできなかったが、同時期にオールアバウトが立ち上がり、マーケティング兼広報として出向。ここで3年間勤務した。

 新卒からショッピングやマーケティングの仕事にかかわってきた粟飯原氏は、今後はオンラインショッピングが伸びていくだろうとの肌感覚を持っており、お取り寄せビジネスをやってみたいという思いが強くなっていったという。と同時に、自身が食の分野に興味があったため、仕事とは別にグルメの食べ歩きサイト「OL美食特捜隊」を立ち上げた。これがうけ、口コミによりメルマガ会員が3万人に成長。この「OL美食特捜隊」にお取り寄せのコーナーがあり、Q&Aや情報交換が活発になされていたのだ。このコーナーを見ているうちに、絶対にニーズがあるとしみじみ感じたと話す。

「レストランはすごく数があるので、そのなかから自分に合ったものを選択するという市場は盛り上がっていくだろうと感じてるとともに、お取り寄せの世界でも同じことがおきるだろうと思いました。インターネット上のありとあらゆるところでモノを売り出したら、売っているものが多すぎて選べなくなる。そこではメディアが重要になってくるだろうと」

 粟飯原氏は、自分たちがものを売ってしまうと客観性が持てなくなる。客観的にメディアとして運営していきたい、と話す。

 しかし、疑問は残る。ユーザーにとって、お取り寄せに値する気に入った商品を売るショップを見つけたら、そのユーザーは次からショップのドメインで直接購入するようになり、「おとりよせネット」は1次紹介所となってしまうのではないか?と。これに対しては、次のように断言する。「男性と女性とでは行動に違いがあります。男性は気に入った店にずっと通い続ける。一方女性は次々と店を開拓したいという思いが強いんです。お取り寄せも同じで、いろんなところで食べ比べをしたいんですね。A店に行ったら、今度はB店に行ってみようという具合に、皆がホッピングしていると、(おとりよせネットのようなサイトは)維持していくことができるんです」

 現在ユニークユーザーは月間20万人。ここを増やしていくのが課題となっている。

 当初3名ではじめたアイランドという企業は、いまや常駐で20名にスタッフがおり、在宅スタッフも含めると50名の所帯になっている。今年、ユーザーイベントができるキッチンスタジオを企業に併設。オンラインショップの素材を使ってフルコースを作って食べてみる、お取り寄せで人気の素材を使った調理法を学ぶ、などリアルな交流の場となっている。

【新連載・「視点」】食へのこだわりが、ビジネスに繋がった!メディアに徹した「おとりよせネット」

《RBB TODAY》

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