ネットとデジカメが変えた学校行事の写真販売――売上3倍 画像 ネットとデジカメが変えた学校行事の写真販売――売上3倍

IT業務効率

■学校で写真の買い方が変わった

 学校の廊下に番号のついた修学旅行の思い出写真が貼り出される。生徒はその番号を封筒に書いて注文する……。誰もが学生時代の記憶に残っている光景だろう。しかし今、こうした学校の写真をネットで提供するところが徐々に増えてきているという。ネットでIDとパスワードを入力すると、入学式から運動会、遠足まで複数のカテゴリーに分類された写真のサムネイルが登場し、気に入った写真をその場で注文できる。写真も、“自分だけが写ったスナップ写真”を注文することができる。従来学校で販売されるものは1枚に複数人数が写っているものがほとんどだった。その背景には、販売する枚数が限られているということ、実は販売したからには必ず“誰かに”買ってもらわなければいけないという事情がある。フォトクリエイトの代表取締役社長の白砂晃氏は、起業時を振り返り「50年後も相変わらず茶封筒で写真を買っているはずはないと思った」と話す。

■柱になる2つのビジネスモデル

「(学校で販売される)運動会の写真にはこういう写真はないですよね」。白砂氏が見せた写真は、バトンを持って必死に走っている小学生の女の子の縦イチのアップ写真だ。高性能なデジタルカメラが普及した現在でも、プロでなければ撮影できない写真であることがわかる。また、代表的な卒業アルバムについても、白砂氏こう話す。「小学校の場合、5年、6年を中心に撮るんです。しかし、3年生~4年生のころの写真を撮るとメチャメチャ売れるんです。売上げは3倍になります。低学年の写真は、幼稚園から引き継いでくるものなので、親御さんは買いたくて仕方ないんです」。またひとつのイベントで掲示できる写真は300カットがせいぜいだったものが、ネットで販売される場合には1000~2000カットにも増えるという。

 同社のビジネスモデルは2つに大別される。契約のカメラマンがイベントを撮影するタイプ(インターネット写真サービス事業)と、同社のシステムをカメラマンに使ってもらうASP(フォトクラウド事業)だ。これまでは学校に直接営業をかけ、同社のテクニックや知見を広めてきた。その数は500校にのぼる。ところが、3年前からその営業をパタリとやめたという。「実は、学校と地域の写真家は数十年の付き合いがあったりします。それをリプレイスするのはハードで現実的ではないんです」(白砂氏)。地域のカメラマンには学校と良好な関係を維持してもらいつつ、写真の販売システムを無料で使ってもらう。そのかわり売上げの3割をバックしてもらう。最初のうちはこのやり方がなかなか理解してもらえなかった。「プリントしたものでないとダメだ、と断られることもあるんですが、実際そんなことを言ってる親御さんは少ないんです」「また、地方のカメラマンは子供たちを万遍なく撮らないと怒られるので、個人のスナップ写真のようなものは、なかなか撮影できないんです。彼らは怒られてきた文化なんで、チャレンジしていくよりもリスクヘッジをとる傾向にある」と白砂氏は振り返るが、最近ではシステムの良さに気が付いて取引きをするところが増えているという。カメラマンもシステムを使うことによって、本来の業務である撮影に集中できる。ちなみにシステムは自前により市価の10分の1のコストで構築。大阪にもデータのバックアップをとり二重化している。

 しかし、少子化という側面を見ると学校をビジネス領域のひとつにすることこそリスクがあるのではないかと考えてしまう。それについて白砂氏は、学校を明確なターゲットにしており、まだまだ伸びしろがあると反論する。従来の写真は売れる低学年をあまりとらえていないし、撮影のイベント機会が限られているという。「幼稚園をとってみても、運動会や学芸会はよく撮影されてました。しかし、入園からはじまって、遠足、プール開き、七夕、お泊り保育、お芋堀り……毎月1回はイベントがあるんですよ」。地域のカメラマンと連携しつつ、何をどう撮影すれば売れるかというノウハウを伝授し、販売する写真もこれまでの数倍に伸ばしていく。同社のフォトクラウド事業は学校関係だけではないが、前年比127%で伸びている(6月期)。

■飛躍のきっかけになった東京マラソン

 白砂氏は早稲田大学政治経済学部を卒業後、NTT東日本に入社。支店でSOHO担当としてISDNを販売していたが、1年後の2000年3月にサイバーエージェントに転職。2001年にはシーエー・モバイルに出向し、モバイル広告を立ち上げた。ところが翌年には同社を退社し、現在のフォトクリエイトを設立している。白砂氏はNTT時代にインターネットに触れ、ネットの世界観を常に気にかけてきた。当時は、撮影した写真をネットにアップして共有していくサービスが存在していたが、プロが撮影したものを販売する仕組みはなかったという。「創業を一緒に行った高校時代の同級生が、当時は富士通にいたんです。彼が4ヵ月間海外に行っていて、帰ってきたときに、アメリカにはプロのカメラマンが撮影した写真を販売するプラットフォームがあり、それを貸し出すASP事業があると聞いたんです。そんな事業は日本にはまだありませんでした」。これがヒントになると同時に、広告ビジネスにもつながるという予測もついた。「ネットには既得権益がないじゃないですか。そういう意味で街を作りやすい。街は人の集合体で、人を集めることが重要です」「写真を売ることによって人が集める大型の写真展をやっているイメージがある。いつかは広告ビジネスにもつながるというのは考えていた」(白砂氏)。現在同社のユニークユーザーは1000万人にもなる。いろんなイベントにおいて人が集まれば集まるほどビジネスになっていく。

 実は同社が飛躍するきっかけになったのは東京マラソンだった。東京マラソンは大型大会のひとつだが、3万6000人のランナーをプロカメラマン70人で撮影。背景に東京タワーやスカイツリーが入る場所にカメラマンを配置するなど工夫した。参加したランナーは、後日ウェブサイトで自分のゼッケンナンバーを入れるとその人の写真の一覧が登場し、気に入ったものを購入できる。ゼッケンと写真との照合は、中国とベトナムで行っている。この手法がうけた。現在では170人のカメラマンを投入し、カット数は130万カットにのぼっている。これらのマラソン大会は国内で約600イベント。ブームが追い風になり、大会はまだまだ増える。1県で1つのマラソン大会をやっていこうという動きさえあるという。その分カメラマンのハンドリングは大変だが、数多くのイベントをこなしていくと同社には経験則がたまっていく。同社には撮影した写真をチェックする部門もあり、カメラマン、大会、カット、売上げが全てヒモ付いているため、どのカメラマンが何を撮りにいくと売上げがどれくらいになるかという予想がつくという。過去のデータを見ながら次の大会のアサインを行っていけるのだ。現在カメラマンの登録数は1369名となっている。

 スポーツ系領域の売上げは同社の50%を占める。進出したのはマラソン大会だけではない。サッカー大会も、たとえば幼稚園から大学・一般までをカバーし、それがクサ大会と言われるものから区大会、県大会、全国など様々なブロックを網羅している。「大会は“記念度”が高く低年齢のものがよく売れる。一番売れるのは幼稚園の大会だ」という。

 実は同社が入り込んだ最初の仕事は社交ダンスの大会だった。「そこそこ芸能人もやっていて、お金も時間も余裕がある人たちが写真を買うのでは?」という気持ちからウェブで大会をチェックし、営業をかけていったという。そのビジネスは現在スポーツ全体に広がり、年45000イベントをこなすまでに成長した。昨年10月には台湾でも事業を展開。台湾で開催されたマラソン大会で、東京マラソンと同様のサービスを展開した。

 事業の中心は、イベントを通してその人のストーリーを撮影していくことだという。同社のサービスは、結婚式では新郎新婦の両親に対して売れるというが、必ずといって良いほど思いでの写真を披露するシーンがある。もし、顔認証技術がもう少し進化すれば、同社の写真ストックから個々人のストーリーを簡単に拾い出すことも可能になっていくかもしれない。

【連載「視点」】従来の写真販売ビジネスを変えた!攻めの着眼点とは?

《RBB TODAY》

編集部おすすめの記事

特集

IT業務効率 アクセスランキング

  1. ドローンのモーターは中国製ばかり、ツカサ電工が防水・防塵で勝負

    ドローンのモーターは中国製ばかり、ツカサ電工が防水・防塵で勝負

  2. NHK『超絶 凄ワザ!』の対決に初めて参戦した国の機関とは?

    NHK『超絶 凄ワザ!』の対決に初めて参戦した国の機関とは?

  3. 水が凍結する時の圧力で壁解体! 環境に優しい工法

    水が凍結する時の圧力で壁解体! 環境に優しい工法

  4. リニア新幹線に向けて回転水平多軸式連続壁機を開発!

  5. ガンダムまであと一歩?全長4メートルの人型ロボット登場!

  6. 【スマート林業:2】経済効果20億、ICTが森林をお金に換える!

  7. 沖縄の訪日観光客はなぜ、ICリストバンドを装着しているのか?

  8. 米国でくら寿司が快進撃を続ける理由

  9. 古河ロックドリルが新型ドリルジャンボを開発。リニア新幹線を視野に、最大出力が25%向上

  10. 【今流スマホ予約・後編】繁盛店が語るスマホ予約の集客力

アクセスランキングをもっと見る

page top