田舎体験で訪日外国人を取り込む――田舎体験宿泊予約サイト「とまりーな」 画像 田舎体験で訪日外国人を取り込む――田舎体験宿泊予約サイト「とまりーな」

インバウンド・地域活性

■外国人が地方に現れれば日本が変わる

「そもそも地方に観光資源なんて少ないんです。観光資源を磨くという言葉をよく聞きますが、磨くだけのものがあるのかと。例えば、京都の方がいいと言われたらそれで終わりなんです」。
 田舎の農家や漁師の家、古民家などへの宿泊予約サイト「とまりーな」を運営する百戦錬磨(直接の運営はとまれる株式会社)の代表取締役社長 上山康博氏は話す。現在、協力してくれる家は東北で300件ほど。長野県の農家などとも話を進めている最中で、早い段階で全国約1万件にもっていく予定だ。

 グリーンツーリズム、エコツーリズムという言葉がもてはやされた時もあったが、結局成果がでているものは少ない。期待値はあったがブレイクしない。従来の画一的な手法に、上山氏は疑問を投げかける。

 上山氏は地方を差別化して魅力アップしていく手段は、そこに住んでいる人にフォーカスするしかないとし「住んでいる人が観光資源なんです」と力説する。旅行関係の前職で地域振興を手掛けたときは、地方が皆同じアピールを行っていることに気が付いた。その時を振り返り「まるで駅ナカと同じで、駅前のロータリーに降りてもどこで降りたかさえわからない状態」と表現する。「もっと地域性を出していく。“いかにもこの地域”、といったものを出していかなと、しょぼい東京、しょぼい京都になってしまう」と危機感を表す。

 地域の魅力も出せないから、日本の旅行業界が夢にまで見た長期滞在型という旅行もなかなか実現できていない。「一か所に長期滞在するには、なにかしら生活に根付いて体験できる環境を作らなければいけない」(上山氏)。「とまりーな」に登録されている農家(民泊)では、何かしらを宿泊者が体験する。いわゆる体験の延長に宿泊があるのが「民泊」だ。これに対して「民宿」は旅館業法の簡易宿所の免許をとっているため、宿泊を主体とした施設となる。「民泊では、たとえば農業をやったことない人にとっては仕事体験であり社会体験なんです」(上山氏)。

 こうした田舎体験が見直されている背景もある。「以前と比べると、家族構成が変わってきており、田舎がない親とかもいます。おじいちゃん、おばあちゃんも都市に住んだほうが楽。だから“田舎に帰る”という感覚がないし、自分たちが体験したような虫取りなどもできなくなっている」と話すのは取締役部長の三口聡之介氏(とまれる株式会社代表取締役)だ。田舎がない人たちにとって土いじりは貴重な体験だ。また、一度農家に宿泊するとホストと家族のようなつながりができるのも、一般の旅行では体験できないメリットだ。

 しかし、これらの体験型宿泊に強い関心を持っているのは、日本人よりも、むしろ外国人だ。そもそも、欧州などの旅行者は観光スポットを足早に訪問するような旅行よりも、地域に入り込む体験型の旅行を好む傾向にあるという。そいう外国人にとっては、これら「とまりーな」で提供している民泊は魅力的にうつる。

 上山氏は「外国人が地方に現れること自体が日本を変える」と強調する。「なにもかも一度は外からやってくる。それを消化する力は極めて高いので、動き出す外国の力だと思う」。2020年の東京オリンピックを見据えて、地方がインバウンドビジネスに動き出しているが、そう簡単なものではない。「とまりーな」では英語版も作成し、外国人も視野に入れた戦略をたてている。

■Googleがやらないことをしないと無理

 「気合と根性です(笑)」。上山氏は、地方の農家など協力先を増やす作業についてこう話す。「私たちが、はじめに手がけたのは東北なんです。東北っていうのは、実はあまり盛り上がってないんですね。だけど、日本の原風景が非常に濃く残っているんです。そこでは、地域のおじちゃん、おばちゃんに気合いと根性で集まってもらって、民泊をどうやってやったらいいか、ひとつひとつ地域を訪れて説明していくんです」。

 こんなエピソードもある。青森のある地域に説明に行った時のこと。「説明は分かったので、うちの地域の裸祭りに参加してくれ」と言われ、実際にスタッフがフンドシを巻いて祭りに参加した。「来ると言っていながら実際に来たヤツはいなかった。お前は仲間だと認められました(笑)」。

 サイトに競合はいないと上山氏は話す。「たぶん普通の人はやりたくないんじゃないかと思いますよ。インターネットを使うような人を集めているのではないし、非効率的ですから」。「基本は泥臭く、気合と根性です」としながら、その理由を「こういうインターネットのサービスは、できるだけGoogleじゃないようにするしかないんです」と解説する。旅行サイトがGoogleに取って代わられる危険性を次のように予想する。「全世界のホテルや旅館情報やYouTubeも開放する。宿泊先が、そのGoogle経由でお客さんを獲得した場合にもGoogleは料金は不要です、無料ですというでしょう。今、全世界の旅行会社の広告の相場と自分たちの相場を計っているはずです。OTA(Online Travel Agency)を商売で使っているホテル旅館から見ると、いつでもGoogleにチェンジできるんです」。

 「とまりーな」の売上げは、予約システムの利用料だ。予約料金の10%をホスト(民泊提供者)からもらい、5%を宿泊者から手数料としてもらう。ある程度数が集まり、地域が見えてきたら広告予算も可能だろう。

 地域に体験宿泊をしながら人と触れ合うと、前述のように親密になる。そして手作りの料理や農作物を食べた場合には、再度あの料理を食べたいとお取り寄せの需要も生まれてくるかもしれない。とまりーなでは、オプションの機能としてお取り寄せのEコマース機能も予定している。

 地域の人はまだサポートをしてもらわないと宿泊事業に協力できない人も多い。上山氏は「将来的に目指すのは、家単位でちゃんと情報を公開していただき、自分達の家や家族はこうで、どんな体験ができるかを、自分自身で発信していただくことだ」という。

 今までの旅行会社は、今あるものに対して利便性を図るという役割しかない。「とまりーな」は、なぜその地域に行くのか?その理由を作り、人を移動させていきたいという。来期の売り上げ予定は3000万円。3~4年後には3倍~4倍を目指している。

【連載「視点」】新しい地域活性の形!田舎体験宿泊予約サイト「とまりーな」の戦略

《RBB TODAY》

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