おもてなし規格認証を活用した「観光まちづくり」/伸び盛り企業会議2018

2018年3月27日
 日本のGDPの70%を占め、経済の柱ともいえるのがサービス産業だ。今後の地域経済や日本経済の発展にはサービス産業の活性化と生産性向上が必須の課題だ。
 日本のGDPの70%を占め、経済の柱ともいえるのがサービス産業だ。今後の地域経済や日本経済の発展にはサービス産業の活性化と生産性向上が必須の課題だ。
 しかしサービスという目に見えないものは、その基準となるものがないと評価をすることがなかなか難しい。そこで国内のサービス産業事業者におけるサービス品質を「見える化」する目的で創設されたのが「おもてなし規格認証」だ。
 2018年2月26日に開催された『伸び盛り企業会議2018』(主催・日本経済新聞社)では、サービス産業の生産性改革をテーマにさまざまな講演が行われ、講演の一つ「地域おもてなしの向上事例」において、おもてなし規格認証の概要と三つの地域におけるおもてなし規格認証活用の事例が紹介された。

2018年2月26日に開催された『伸び盛り企業会議2018』(主催・日本経済新聞社)。サービス産業の生産性改革をテーマにさまざまな講演が行われ、「地域おもてなしの向上事例」において、三つの地域におけるおもてなし規格認証活用の事例が紹介された

■おもてなし規格認証を活用し、訪日外国人のリピート率を上げることが急務

 まずサービスデザイン推進協議会理事の平川健司氏より、おもてなし規格認証の概要について説明があった。
 おもてなし規格認証は単なる格付けではないということを平川氏は強調。つまり、それぞれの事業者がサービス業務を棚卸し、改善プロセスを回し、その成果が出ているかを評価する制度であるということだ。サービス品質の見える化について標準化を行い、サービス版のISO認証を目指していると平川氏は話した。
 おもてなし規格認証を創設した目的のひとつは、2020年の東京オリンピックに向けた観光立国宣言を進めるにあたり、宿泊や小売、旅客といった観光の核となるサービス事業者の生産性を向上させることが挙げられる。どんなに海外からの観光客を呼んでも、嫌な思いをされたらそれでおしまいだからだ。
 また、これまで観光まちづくりというと企業立地というケースが多かったが、一つの企業が町を支えるという時代はすでに終わっており、地域ぐるみで取り組まないと地域経済は回っていかないと平川氏は話す。しかし地域における人材育成やIT導入などの課題はまだまだ多い。そこで認証制度を上手く使ってもらうというのがおもてなし規格認証のねらいだ。
 地域ぐるみで観光サービス事業の生産性を向上させるためには、設備・原価・時間の3つをいかに付加価値へと変えることができるかが大きなポイントとなる。設備にかかる固定費の削減と新しい設備の導入、必要な経費と無駄な経費の仕訳、接客時間の確保などによってサービスレベルを上げることで、お客様に評価される、つまりお金の取れる付加価値に変換することが必要ということだ。その付加価値を生み出すためには何ができるかを考える必要があると平川氏は話した。
 「2020年、訪日外国人4000万人の何%をリピーターにすることができるか、この2年が勝負です。今、おもてなし規格認証を活用した街づくりが3つのエリアをモチーフに始まっていますが、この情報がシェアされ各地域で観光まちづくりが進んでいけばと思います」(平川氏)

■北九州のおもてなし規格認証「認証は成長の旗印であり仲間の証」

 次に各地域で行われているおもてなし規格認証の活用事例として、北九州、静岡、豊岡の3つのエリアが紹介された。
 北九州の事例として、おもてなし規格認証機関Ostiの理事・渋谷健氏は北九州のキーコンセプトを説明した。まず今までの資本主義のあり方を問い直すことを前提とすること。そのうえに、一つのパイを奪い合うのではなく、新しいパイを作ってみんなが幸せになる社会をつくることが必要だという。おもてなし規格認証の金認証取得によって新しいパイを作り、金認証を取得した企業がつながっていくことが普及のポイントになった。
渋谷氏は「キーワードは"友達最強"です。友達がやっている事業は自然とリピート率も上がります。それならばみんなを友達にしてしまおうというのが北九州方式です。おもてなし規格認証は成長の旗印であり、仲間の証です。企業が伸びれば仕事も増えます。仲間が集まると新しいアイデアが生まれ、お互いがお客さんになり、リソースの共有もできるようになります」と結んだ。

 北九州のおもてなし規格認証活用企業として紹介されたのはタクシー業の勝山自動車。勝山自動車では接客力を上げたタクシー「プレミアムタクシー」でVIPをもてなしたり、また車椅子に対応したタクシーの導入やセクハラ・パワハラの乗客お断りなどがメディアに取り上げられ反響を呼んでいると、勝山自動車代表取締役社長の廣石敏文氏は語った。

 「おもてなし規格認証を取得してから、自主的に働きやすいタクシー会社とは何かということを議論したり、プレミアムドライバーになりたいという従業員が増えました。社風の変化スピードが非常に速くなったと感じています」(廣石氏)

■静岡のおもてなし規格認証「地域で連携、点ではなく面で活性化」

続いて静岡商工会議所専務理事の大場知明氏より静岡市の事例が紹介された。静岡では「連携」をキーワードにおもてなし規格認証を広めており、各地域のコンソーシアムメンバーと協力してサービス事業者を応援しているという。また金認証取得のメリットを創出する必要性を感じ、企業のPRや情報共有にも力を入れている。

 大場氏は「静岡県は伊豆や箱根のある東部が先行しておもてなし規格認証の取得を進めていますが、今後はコンソーシアムの協力によって中部や西部にも広め、金認証や紺認証にふさわしい会社を増やしていきたい」と話した。

 静岡銀行常務執行役員の大橋弘氏は、地域金融機関に課せられた地方創生の大きなミッションとして、人口減の中で落ち込む地方の消費をどんな産業でカバーするかが課題だと話した。また銀行もサービス業であるということから、静岡銀行では全支店でおもてなし規格認証の紅認証を取得しており、そのうちの3店では金認証を取得。金認証を取得してからは外国人対応の認識が向上していると話した。

 大橋氏は「地方の活性化は個々の『点』ではなく、地域で連携した『面』でやっていかないといけない。おもてなし規格認証がそのきっかけになればと思います」と結んだ。
執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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