■ニュース深掘り!■改正風営法で変わる夜のインバウンド

2016年8月19日
これまでは午前0時までの営業だったクラブ。それが、15年6月に参院本会議で可決・成立した改正風俗営業法によって、16年6月からは24時間の営業が可能となった。「店内の照明が10ルクス以上である」などの条件はあるが、今後はナイトスポットに新たな商機が生まれそうだ。
 風俗営業法の改正に伴うナイトスポットの増加については、実は国内のインバウンド向けビジネスでも期待が寄せられている。15年には過去最高の1973万7千人もの外国人観光客が訪れるなど、盛り上がりを見せているインバウンド市場。そこでは以前からナイトスポットの不足が観光資源の問題となっており、風俗営業法の改正で新しい外国人向け観光地が誕生するのではないかと期待の声も上がっている。

 世界から人を呼べるナイトスポットを立ち上げるとして、そのためには何が必要なのか? インバウンド向けのコンサルティングサービスなどを展開する、ぴあ株式会社 事業統括本部 インバウンド事業開発室室長の宮崎裕二さんに話を伺った。

インバウンドが数多く訪れる新宿でも、人気のナイトスポットとして知られている新宿ロボットレストラン。店内での撮影を許可したことで、口コミによって外国人の間で認知が広まった

■日本ナイトスポットの課題は受け入れ側のマインド

――外国人観光客にとって、現在、日本のナイトスポットはどのように受け止められているのでしょうか。

宮崎 訪日外国人観光客からは、日本の夜は「早すぎ」とよく聞きます。渋谷でも朝まで開いているようなお店は限られていますし、あったとしても点在していてまとまっていないし、バリエーションも少ない。これでは訪日外国人観光客から、「早すぎ」という、評価を受けるのも仕方ないのかもしれません。

ぴあ 事業統括本部 インバウンド事業開発室 室長 宮崎裕二さん

――今回の風俗営業法の改正で、インバウンド向けナイトスポットの発展を期待する声もあります。

宮崎 風俗営業法の改正だけで、新たにインバウンドの商機が生まれるかというと、どうでしょうか。タイやシンガポールなど、日本よりも先んじて観光立国に取り組んでいる国には、外国人相手に商売をするのが大前提のスポットがちゃんとあります。“来る側”も“呼ぶ側”も分かって成立している、そういう場所が日本にはまだ少ないと思います。

――確かに、そういう場所はありませんね。日本だとなにか支障があるのでしょうか。

宮崎 支障があるとすれば、呼ぶ側のマインドにあるように思います。日本の場合、風俗営業法の問題以前に「外国人が苦手」という意識があるのではないでしょうか。外国人観光客は言葉や決済、交通アクセスなどに不安があります。これらを理解して「大丈夫、歓迎するからいらっしゃい」というお店やスポットが少ないように思います。ただ、個別のお店ではしっかり取り組まれているところも、徐々に増えてきているとも感じています。

 とはいえ、一店舗だけが頑張っても集客は難しいので、スポットとして集積されている方がよいでしょう。その観点では、新宿ゴールデン街はすばらしいなと感じます。皆さんも行けばわかりますが、集積されているという環境もさることながら、外国人観光客に向けて「歓迎するから安心して入ってきてね」というようなメッセージを入り口に掲出しているお店があります。このマインドが素晴らしいな、と思うんですね。

■風俗営業法改正の先にある世界との競争

――そのような現状で、風俗営業法の改正が意味を持ちうるとしたら、どういった部分なのでしょうか。

宮崎 観光立国を目指すうえでの競争力の部分でしょうか。言い換えるとカジノリゾートなど、いわゆる統合型リゾートへの布石になるのかなと。ほかにもビーチやスキーリゾートなどへも好影響が出るといいなと思います。日本は都会だけではなくて、山や海でも夜が「早すぎ」と言われています。観光立国になるということは、世界中での観光客の取り合いに参戦するということで、夜も含めた24時間フル稼働する観光コンテンツの勝負が必要なのだと思っています。

 ただ、営業時間を長くすることはよいことですが、それだけでインバウンド客が増えるわけではありません。最低限整備していかねばならないこと、これからさらに整備が必要なことは、まだまだあると思います。

風俗営業法の改正によって、クラブの24時間営業が実現。ナイトスポットの増加を求めるインバウンドから注目されている

――地域単位だと、インバウンド向け観光を成功させるために何が必要なのでしょうか。

宮崎 北海道のニセコや群馬の水上などが、訪日観光客の取り込みに意図的に動いて成功した例として有名です。それ以外の地域でも、インバウンドで一定の成果をあげておられる地域には、必ず地元の自治体などにキーマンがいらっしゃいます。外国人がいっぱい来るように一生懸命仕掛ける地元の人がいるんです。そのキーマンは必ずしも日本人とは限りません。日本に長く住んでいて、外国人の目線で地域の面白さに気付いたという方が牽引されているパターンも、地域単位では増えています。

■インバウンド向けナイトスポット成功に必要なもの

――インバウンド向けのナイトスポットを始めるとして、店舗による外国人観光客への働きかけ方としては、どのようなアプローチが効果的でしょうか。

宮崎 重要なのはマーケティングで、来てほしい外国人をなるべくしっかり理解するということです。当たり前のように聞こえますが、これができているところはとても少ないですよ。いきなり奇をてらう必要はなくて、「何時まで開いているか」「どんな楽しみができるか」「どのように決済できるか」「交通アクセスはどうなっているか」という4点ぐらいを、まずはきっちりとその国の人達が分かる言語で伝えるということからでしょう。

 あとは外国語対応ができるスタッフがいるという情報も安心感を与えられます。こうした受け皿を用意したうえで、来店した外国人観光客にはシェアしてもらうための仕掛け、お友達に宣伝してもらうための仕掛けをしていくべきでしょう。店内の写真撮影、動画撮影を許可して、SNSへのアップを促す方法というのもあります。当初、東京・新宿のロボットレストランさんが実践して成功した戦術ですね。

東京・明治座では16年9月より「NIHONBASHI NIGHT PROGRAM SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」を、19時、20時30分からそれぞれ開演。このような演劇やパフォーマンスなどの夜間演目も、インバウンドから人気を集めている

――インバウンド向けナイトスポットとして、ロボットレストラン以外では、どういった成功例がありますか。

宮崎 ナイトスポットと言えるかどうか分かりませんが、ドン・キホーテさんです。百貨店は夜の8時で閉店してしまい、明日にはバスで移動しなければならない。それでも、もっと化粧品は欲しいし、お菓子も買い足りないという時、外国人にとっての選択肢はコンビニかドン・キホーテになります。外国人観光客からしたら非常に貴重な存在ですよね。もちろん国によっての違いはありますが、日本の夜スポットとしてドン・キホーテとロボットレストランはしっかり認知されているという印象です。

Barや居酒屋などでは、外国人を歓迎する旨を伝えることが重要。営業時間や決済方法などを各国の言葉で表記することも、当たり前のようだが行えている店舗は少ない

<Profile>
宮崎裕二(みやざきゆうじ)さん
05年にぴあ株式会社に入社し、11年にメディア営業部門全般の責任者としてインバウンドメディアを担当。13年にインバウンドに特化した事業部門(ジャパンコンテンツチーム)を立ち上げ、訪日観光客向け「夜遊びMAP」、JALインバウンド機内誌「日本達人」、タイ人向けガイド「TOKYO SOI MAP」などを手掛ける。15年4月、インバウンド事業開発室室長に就任。インバウンド事業開発の全般を担当する。

※宮崎裕二さんの「崎」の字は正しくは異字体
《本折浩之/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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